「HSGで卵管が詰まっていると言われた」「クラミジアにかかったことがあるけど不妊と関係がある?」「卵管閉塞ってどんな症状があるの?」——卵管に異常があると告げられた方は、不安や驚きを感じていることと思います。
この記事では、卵管閉塞・卵管狭窄とは何か、その原因・症状・検査・治療の選択肢について、不妊治療専門医の立場からわかりやすく解説します。
この記事でわかること:
- ・卵管の役割と卵管閉塞・狭窄がどのような状態かがわかります
- ・卵管閉塞・狭窄の主な原因と不妊との関係がわかります
- ・自覚症状がほとんどない理由と気づくきっかけがわかります
- ・卵管の状態を調べる検査の種類と選び方がわかります
- ・FT・腹腔鏡・体外受精など治療の選択肢と判断基準がわかります
卵管の役割と卵管閉塞・狭窄とは
卵管閉塞・卵管狭窄を正しく理解するために、まず卵管がどのような臓器かを確認しましょう。
卵管の役割
卵管(らんかん)とは、子宮の左右に1本ずつある細い管状の臓器です。長さは約10cm、直径は最も細い部分で約1mmほどしかありません。
卵管には以下の3つの重要な役割があります。
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| 卵子のキャッチ | 卵巣から排卵した卵子を卵管采(らんかんさい)と呼ばれる先端部分でキャッチします |
| 受精の場 | 卵管の中で精子と卵子が出会い、受精が行われます |
| 受精卵の輸送 | 受精卵を卵管の繊毛運動と蠕動運動(ぜんどううんどう)によって子宮へと運びます |
この3つの役割のいずれかが妨げられると、自然妊娠が困難になります。

卵管閉塞・卵管狭窄とはどういう状態か
卵管閉塞とは、卵管の内腔(内側の空間)が完全に詰まってしまっている状態です。造影剤を注入しても卵管内に流れ込まない、または途中で止まってしまいます。
卵管狭窄とは、卵管の内腔が完全には詰まっていないものの、著しく狭くなっている状態です。精子や卵子・受精卵が通りにくくなり、自然妊娠の確率が大きく低下します。
【正常な卵管】
卵巣 → 卵管采(卵子をキャッチ)→ 卵管内(受精)→ 子宮
精子も卵管内を通って卵子と出会える
【閉塞・狭窄した卵管】
卵巣 → 卵管采 → 【卵管が詰まっている・狭い】
精子が卵子に届かない / 受精卵が子宮に届かない 卵管閉塞・狭窄と不妊の関係
不妊症の原因全体に占める卵管通過障害(卵管因子)の割合は約30%前後とされています。卵管因子は女性不妊の原因の中でも最も多いグループのひとつであり、不妊に悩む方にとって見逃せない要因です。
卵管閉塞・狭窄の主な原因
卵管が閉塞・狭窄する原因はいくつかあります。特にクラミジア感染症は代表的な原因の一つとされており、無症状のまま進行するケースが多いため注意が必要です。
クラミジア感染症
クラミジア・トラコマティスは、性感染症の中でも代表的な原因の一つです。女性の場合、感染しても約80%が無症状のため気づかないまま卵管に炎症が広がることがあります。
クラミジアが卵管に与える影響は以下のとおりです。
- ・卵管内に炎症が起き、繊毛が傷つき機能が低下します
- ・炎症が繰り返されることで卵管内に癒着(ゆちゃく)が生じます
- ・癒着が進むと卵管閉塞・狭窄につながります
- ・卵管采周囲にも癒着が及ぶと卵子のキャッチ機能が低下します
過去にクラミジア感染の既往がある方・パートナーに感染歴がある方は、不妊検査でHSG(子宮卵管造影検査)を早めに受けることをおすすめします。
子宮内膜症
子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)とは、本来子宮の内側にあるべき子宮内膜組織が子宮以外の場所(卵管・卵巣・腹膜など)で増殖する病気です。
子宮内膜症が卵管に与える影響は以下のとおりです。
- ・卵管周囲に癒着が生じて卵管が変形・閉塞する場合があります
- ・卵管采周囲の癒着により卵子のキャッチが妨げられる場合があります
- ・卵巣に子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)が生じると周囲の卵管にも影響が及ぶ場合があります
月経痛が強い・月経量が多い・性交痛がある方は子宮内膜症の可能性があります。不妊検査と合わせて担当医に相談することをおすすめします。
骨盤内炎症性疾患(PID)
骨盤内炎症性疾患(Pelvic Inflammatory Disease:PID)とは、細菌感染が子宮・卵管・卵巣・腹膜などに広がる病気です。クラミジア・淋菌などの性感染症菌のほか、腸内細菌なども原因となる場合があります。
PIDを繰り返すことで卵管内に炎症が蓄積し、閉塞・狭窄が生じやすくなるとされています。
過去の手術・腹膜炎
以下の経験がある方は、術後の癒着が卵管閉塞・狭窄の原因になる場合があります。
原因不明
明らかな感染症・手術歴・子宮内膜症がない場合でも、卵管閉塞・狭窄が起きることがあります。卵管けいれん(スパズム)による一時的な通過障害がHSGで「閉塞」と映る場合もあるため、再検査で確認することが重要です。

卵管閉塞・狭窄の症状
ほとんどの場合、自覚症状がありません
卵管閉塞・狭窄の最大の特徴は、ほとんどの場合に自覚症状がないことです。卵管は腹腔内にある臓器であり、詰まっていても痛みや出血などの症状が出にくい構造になっています。
クラミジア感染の場合も約80%が無症状のため、感染していることも、卵管が詰まっていることも、妊活を始めるまで気づかないケースが大半とされています。
まれに現れる症状
以下の症状がある場合、卵管・骨盤周囲に問題がある可能性があります。ただしこれらの症状は他の疾患でも起こりうるため、症状だけで卵管閉塞を判断することはできません。
| 症状 | 考えられる状態 |
|---|---|
| 下腹部の鈍痛・重い感じ | 卵管水腫・骨盤内癒着の可能性 |
| 月経痛の悪化・月経量の変化 | 子宮内膜症の可能性 |
| 性交痛 | 骨盤内癒着・子宮内膜症の可能性 |
| おりものの増加・異臭 | クラミジア感染・細菌性腟炎の可能性 |
卵管閉塞に気づくきっかけ
卵管閉塞・狭窄に気づくきっかけとして最も多いのは以下のとおりです。
① 不妊に悩んで産婦人科・不妊治療専門クリニックを受診
→ 不妊検査のひとつとしてHSGを受けて発覚
② ブライダルチェック・妊前検査を受けた際に発覚
③ クラミジア感染の検査・治療中に卵管への影響を指摘される
④ 子宮外妊娠(異所性妊娠)の治療後に発覚
卵管閉塞・狭窄の検査方法
卵管の状態を調べる検査には主に3種類あります。
HSG(子宮卵管造影検査)
HSG(Hysterosalpingography:子宮卵管造影検査)は、卵管閉塞・狭窄を調べる最も一般的な検査です。子宮頸管から造影剤を注入し、X線で卵管の通過性・閉塞の部位・子宮内腔の形態を確認します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施時期 | 月経終了後〜排卵前(月経周期7〜12日目頃) |
| 所要時間 | 15〜30分程度 |
| 費用 | 保険適用で約3,000〜10,000円程度 |
| 痛み | 個人差あり(生理痛に似た鈍痛を感じる方が多いとされています) |
| わかること | 卵管の通過性・閉塞部位・子宮内腔の形態・卵管水腫の有無 |
卵管通水検査
卵管通水検査とは、生理食塩水を子宮頸管から注入して卵管の通過性を確認する検査です。造影剤を使用しないためX線被曝がなく、HSGより比較的痛みが少ないとされています。
ただしHSGと比べて閉塞の詳細な部位を特定することが難しい場合があります。HSGと組み合わせて実施されることが多い検査です。
子宮鏡検査
子宮鏡検査とは、内視鏡を子宮頸管から挿入して子宮内腔・卵管入口を直接観察する検査です。卵管の入口(卵管口)の状態を直接確認できるため、HSGで異常が見つかった場合の精査として行われることがあります。
| 検査 | X線被曝 | 痛み | 詳細な部位確認 | 費用(保険適用) |
|---|---|---|---|---|
| HSG | あり | 個人差あり | ✅ 可能 | 約5,000〜20,000円程度 |
| 卵管通水検査 | なし | 比較的少ない | △ 難しい場合あり | 保険適用 |
| 子宮鏡検査 | なし | 個人差あり | ✅ 可能(卵管口のみ) | 保険適用 |

卵管閉塞・狭窄の治療の選択肢
卵管閉塞・狭窄の治療法は、閉塞の部位・程度・年齢・AMH値・パートナーの精子所見などを考慮して担当医が判断します。主な治療法は以下の3つです。
FT(卵管鏡下卵管形成術)
FT(Falloposcopic Tuboplasty:卵管鏡下卵管形成術)とは、閉塞または狭窄した卵管をカテーテルとバルーンを使って内側から広げ、卵管の通過性を回復させる手術です。
FTが適応となりやすいケース:
- 間質部〜峡部(子宮側)の卵管閉塞・狭窄がある
- クラミジア感染後の軽度〜中等度の癒着が原因
- 自然妊娠・AIHでの妊娠を希望している
- 年齢が比較的若く(34歳以下)AMH値が良好
FTによる卵管開通率は一部報告では約80〜90%とされています。術後6ヶ月以内の妊娠率は30〜50%程度とされています。個人差がありますので担当医にご確認ください。
FTは保険適用で行われる治療で、3割負担で両側約27〜30万円程度が目安です。体外受精の保険枠(6回・3回)を消費しない点も大きなメリットです。
腹腔鏡手術
腹腔鏡手術とは、お腹に小さな穴を開けて内視鏡を挿入し、卵管の癒着剥離・卵管采形成・卵管切除などを行う手術です。
腹腔鏡手術が適応となりやすいケース:
- ・卵管采(末梢側)の閉塞・高度癒着
- ・卵管水腫の重症例
- ・重度の子宮内膜症による高度癒着
- ・FTで到達できない部位の閉塞
FTと異なり全身麻酔と入院が必要です。術後の回復期間は1週間程度が一般的とされていますが個人差があります。
体外受精(IVF)
体外受精(In Vitro Fertilization:IVF)とは、卵巣から採取した卵子と精子を体外で受精させ、培養した受精卵を子宮に移植する生殖補助医療(ART)です。
卵管を使用しないため卵管閉塞・狭窄があっても妊娠が可能です。以下のケースでは体外受精が優先的に検討されます。
- ・年齢38歳以上でAMH値が低い方
- ・両側卵管閉塞・手術困難な場合
- ・重度の男性因子不妊を合併している方
- ・FT・腹腔鏡術後も妊娠しなかった場合
- ・抗精子抗体陽性の方
治療法の選択基準まとめ
| 閉塞の状態 | 推奨される治療 |
|---|---|
| 間質部〜峡部の閉塞(34歳以下・AMH良好) | FTが選択される場合が多い |
| 間質部〜峡部の閉塞(35歳以上・AMH低値) | FT+早めのIVF移行を検討 |
| 卵管采(末梢)の閉塞・高度癒着 | 腹腔鏡手術 |
| 卵管水腫の重症例 | 腹腔鏡手術(卵管切除後)+IVF |
| 両側閉塞・手術困難 | 体外受精(IVF) |
| 重度の男性因子合併 | 体外受精(IVF)・顕微授精 |

よくある質問(FAQ)
Q. 卵管閉塞があると絶対に自然妊娠できませんか?
A. 片側のみ閉塞していて反対側の卵管が開通している場合、その側の卵巣から排卵した際には自然妊娠できる可能性があります。両側閉塞の場合は自然妊娠が非常に難しいとされていますが、FTや腹腔鏡手術で卵管を開通させることで自然妊娠の可能性が生まれる場合があります。担当医とご相談ください。
Q. クラミジアに感染していたことがありますが、必ず卵管閉塞になっていますか?
A. クラミジア感染の既往があるすべての方が卵管閉塞になるわけではありません。感染の程度・治療のタイミング・個人の免疫反応によって卵管への影響は異なります。ただしクラミジア感染は卵管閉塞の最多の原因とされているため、既往のある方は不妊検査でHSGを受けて卵管の状態を確認することをおすすめします。
Q. 卵管閉塞はどのくらいの人がなっていますか?
A. 不妊症の原因全体に占める卵管通過障害の割合は約30%前後とされています。決して珍しい状態ではなく、不妊治療を受けている方の中で一定の割合を占めています。
Q. 卵管閉塞が疑われたら、すぐに手術が必要ですか?
A. 閉塞の状態・部位・年齢・パートナーの精子所見などを総合的に評価してから治療方針を決めるため、すぐに手術が必要とは限りません。まず担当医と検査結果をもとに治療の選択肢を確認してください。卵管けいれん(スパズム)による偽閉塞の場合もあるため、再検査で確認してから判断することも重要です。
Q. 卵管閉塞の治療は痛いですか?
A. 治療法によって異なります。FTは日帰り手術で静脈麻酔を使用する場合は処置中の痛みはほとんど感じないことが多いとされています。腹腔鏡手術は全身麻酔下で行うため処置中の痛みはありません。術後の痛みは個人差がありますが、いずれも鎮痛剤でコントロールできることが多いとされています。
Q. 体外受精に進む前にFTや腹腔鏡手術を試した方がよいですか?
A. 年齢・AMH値・閉塞の部位によって異なります。34歳以下でAMH値が良好であれば、まずFTで自然妊娠・AIHでの妊娠を目指すことが保険枠の温存にもつながり合理的な選択肢のひとつとされています。ただし38歳以上でAMH値が低い場合は時間的な観点から体外受精を優先することが多いとされています。担当医と相談のうえ判断してください。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 卵管閉塞・狭窄とは | 卵管の内腔が詰まっている・狭くなっている状態。不妊の原因の約30%前後を占めます |
| 主な原因 | クラミジア感染症・子宮内膜症・骨盤内炎症・過去の手術 |
| 自覚症状 | ほとんどの場合なし。HSGで初めて気づくことが多いです |
| 検査方法 | HSG(最も一般的)・卵管通水検査・子宮鏡検査 |
| 治療の選択肢 | FT(間質部〜峡部の閉塞)・腹腔鏡手術(末梢側・高度癒着)・体外受精(IVF) |
| FTの特徴 | 日帰り・保険適用・体外受精の保険枠を消費しない |
参考)
※本記事の情報は一般的な医学知識に基づいており、個々の症状・治療方針については必ず担当医にご相談ください。 ※本記事の情報は作成時点のものです。制度・費用は変更される場合があります。最新情報は担当クリニックにご確認ください。
助産師より

卵管閉塞・卵管狭窄と聞くと、「自然妊娠は難しいのかな」「どうして自分が…」と、不安やショックを感じる方も多いと思います。
特に卵管の問題は、自覚症状がほとんどないまま不妊検査で初めてわかることが多く、突然の結果に戸惑われる方も少なくありません。
ですが、卵管閉塞・狭窄といっても、片側だけなのか、どの部位なのか、年齢やAMH値、精子所見などによって、治療の選択肢や妊娠の可能性は大きく変わります。
また、HSGで「閉塞」と言われても、卵管けいれん(スパズム)による一時的な通過障害の場合もあります。結果だけで必要以上に自分を責めたり、「もう妊娠できない」と決めつけたりしないでくださいね。
現在はFT・腹腔鏡手術・体外受精など治療の選択肢も増えており、ご夫婦それぞれの希望や状況に合わせて治療方針を考えていく時代になっています。
不妊治療は、身体だけでなく心にも負担がかかりやすいものです。不安や迷いを一人で抱え込まず、医師や助産師、看護師など周囲のサポートを受けながら、あなたに合った方法を見つけていってくださいね。



