片側卵管閉塞でも妊娠できる?FTは必要?両側との違いと治療の選択基準を解説

「HSGを受けたら、片側の卵管が詰まっていると言われた」「片側だけなら大丈夫?それとも治療が必要?」——片側卵管閉塞と診断された方の多くが、このような疑問を抱えています。

「もう片側が開いているから大丈夫」と言われることもあれば、「FTを勧められた」というケースもあります。実は片側卵管閉塞の対応は、閉塞の部位・年齢・AMH値・パートナーの精子所見など、複数の要因によって大きく異なります。

この記事では、片側卵管閉塞の正しい理解と治療の判断基準について、不妊治療専門医の立場から解説します。

この記事でわかること:

  • ・片側卵管閉塞でも自然妊娠できる可能性があるかどうかがわかります
  • ・片側と両側の閉塞で何が違うのかがわかります
  • ・片側卵管閉塞にFTが必要なケース・不要なケースがわかります
  • ・年齢・AMH値・精子所見による判断基準がわかります
  • ・片側閉塞と診断されてからの次のステップがわかります

片側卵管閉塞とは

片側卵管閉塞とは、左右2本ある卵管のうち一方だけが閉塞または狭窄している状態です。

卵管は2本あるため「片側なら大丈夫」は半分正解

卵管は子宮の左右に1本ずつ、合計2本あります。片側の卵管が閉塞していても、反対側の卵管が正常であれば、その側の卵巣から排卵した際には精子と卵子が出会える可能性があります。

この点から「片側閉塞なら問題ない」と受け取られることがありますが、実際にはいくつかの重要な考慮点があります。

【片側卵管閉塞の基本的な考え方】

左右の卵管が1本ずつ
 ↓
片側が閉塞していても
反対側が開通していれば
その側の排卵時に自然妊娠できる可能性がある 

ただし以下の点に注意が必要です
 ・排卵は左右どちらの卵巣からも起きます
 ・閉塞側の卵巣から排卵した場合、
  反対側の卵管が卵子を取り込む(pickupする)こともありますが、確実ではありません。
 ・閉塞の原因・部位によっては早めの治療が有効です

片側閉塞・両側閉塞の違い

項目片側卵管閉塞両側卵管閉塞
自然妊娠の可能性開通側の排卵時は可能性あり非常に困難
妊娠率への影響健常者と比べてやや低下するとされています自然妊娠はほぼ困難
治療の緊急性年齢・AMH値・精子所見による早急な治療が必要
FTの適応部位・状態・年齢によって判断適応があれば積極的に検討
体外受精の優先度状況による早期のステップアップを検討
片側卵管閉塞でも妊娠できる?FTは必要?両側との違いと治療の選択基準を解説

片側卵管閉塞で自然妊娠できる可能性はあるか

排卵のしくみと片側閉塞の関係

排卵は毎月左右どちらかの卵巣から起こります。一般的には左右交互に起きることが多いとされていますが、必ずしも交互ではなく、同じ側から連続して起きることもあります。

片側の卵管が閉塞している場合、自然妊娠の可能性は以下のように考えられます。

排卵した側妊娠の可能性
開通側の卵巣から排卵開通している卵管で受精・輸送ができる可能性があります
閉塞側の卵巣から排卵卵管が閉塞しているため受精が困難なことが多いとされています

このように、片側閉塞の場合は理論上「妊娠できる周期」と「妊娠しにくい周期」が生じることになります。

片側閉塞が妊娠率に与える影響

片側卵管閉塞では、妊娠できる機会が減少する可能性があります。ただし、妊娠率への影響は閉塞部位、反対側卵管の状態、年齢、精子所見などによって異なります。

  • 閉塞の原因(クラミジア感染症・子宮内膜症など)が反対側の卵管機能にも影響している場合があります
  • 閉塞側の卵管周囲の癒着が卵管采のキャッチ機能に影響する場合があります
  • 年齢・AMH値・パートナーの精子所見も総合的に妊娠率に影響します

スパズム(卵管けいれん)による偽閉塞の可能性

HSGで片側閉塞と診断された場合でも、卵管けいれん(スパズム)による一時的な通過障害が原因の場合があります。スパズムはHSG検査時の刺激によって起きる卵管の収縮で、造影剤が通らず「閉塞」と判定されることがあります。

スパズムの場合は実際には卵管が開通しているため、再検査(HSGまたは卵管通水検査)で確認することが重要です。

片側卵管閉塞でも妊娠できる?FTは必要?両側との違いと治療の選択基準を解説

片側卵管閉塞にFTは必要か

FTが有効なケース(片側閉塞でも積極的に検討すべき)

片側卵管閉塞であっても、以下のケースではFTを積極的に検討することが合理的とされています。

① 閉塞部位が間質部〜峡部(子宮側)で、FTが技術的に可能な場合

FTが最も効果を発揮するのは卵管の子宮側(間質部〜峡部)の閉塞です。この部位であれば片側閉塞でも卵管を開通させることで妊娠できる周期を増やせる可能性があります。

② 年齢が比較的若く(34歳以下)AMH値が良好な場合

時間的余裕があり、FTで自然妊娠・AIHを試みる期間を確保できる場合はFTの恩恵を受けやすいとされています。

③ 体外受精の保険枠を温存したい場合

FTは体外受精の保険回数(6回・3回)にカウントされません。片側閉塞を改善することで保険枠を使わずに妊娠できる可能性を広げられます。

④ クラミジア感染の既往がある場合

クラミジア感染後の卵管狭窄では、FTが適応となる場合があります。

FTを急がなくてよいケース(経過観察・AIHを先行できるケース)

以下のケースでは、すぐにFTに進まず経過観察やAIHから始めることも選択肢のひとつです。

状況対応の方向性
HSGで閉塞と判定されたが軽度の狭窄程度卵管通水検査・再HSGで確認してから判断
スパズム(偽閉塞)の可能性がある再検査で確認
開通側の排卵が多い・タイミング法で妊娠の可能性がある数周期タイミング法を試みてから判断
年齢が若く・AMH値が良好で時間的余裕がある数周期のタイミング法・AIH後に再評価

FTを検討せずに体外受精に進む方がよいケース

以下の状況では、片側閉塞であっても体外受精へのステップアップを優先的に検討することがあります。

  • 年齢38歳以上でAMH値が低い場合
  • 重度の男性因子不妊を合併している場合
  • 開通側の卵管にも機能障害の疑いがある場合
  • タイミング法・AIHを複数周期試みても妊娠しない場合
  • 抗精子抗体陽性の場合
片側卵管閉塞でも妊娠できる?FTは必要?両側との違いと治療の選択基準を解説

片側閉塞の部位による治療の違い

間質部〜峡部(子宮側)の閉塞

子宮に近い側(間質部〜峡部)の閉塞はFTが最も有効な部位とされています。

項目内容
FTの有効性FTが有効となることがあります。
治療方法FT(バルーンで内側から拡張)
術式日帰り・保険適用
術後妊娠率術後6ヶ月以内で30〜50%程度とされています(個人差あり)

卵管采(末梢側)の閉塞

卵管の先端側(卵管采)の閉塞はFTで到達することが難しいため、腹腔鏡手術が適応となることが多いとされています。

項目内容
FTの有効性低い(FTでは到達できない場合が多い)
治療方法腹腔鏡手術(卵管采形成術・癒着剥離)
術式全身麻酔・入院が必要

閉塞部位不明・軽度狭窄

HSGで「通りが悪い」程度の所見の場合は、以下の方法で再評価することをおすすめします。

  • 卵管通水検査で再確認
  • 別の周期に再HSGを実施
  • 子宮鏡検査で卵管口を直接確認
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年齢・AMH値による判断の違い

片側卵管閉塞の治療方針は年齢とAMH値(卵巣予備能)によって大きく異なります。

34歳以下・AMH値良好な場合

推奨される治療の流れ(例)

① スパズム除外のため必要に応じて再検査
 ↓
② 閉塞側がFT適応(間質部〜峡部)であればFTを検討
 ↓
③ FT後または経過観察しながら
 タイミング法・AIHを3〜6周期実施
 ↓
④ 妊娠しない場合は再評価・体外受精を検討

※FT後は卵管機能が完全に正常化するとは限らず、異所性妊娠(子宮外妊娠)のリスクに注意が必要です。妊娠判定後は早めの受診が推奨されます。

35〜37歳・AMH値が低下傾向の場合

推奨される治療の流れ(例)

① FTの適応があれば早めに実施
 ↓
② 術後タイミング法・AIHは3周期程度
 ↓
③ 早めに体外受精へのステップアップを検討

38歳以上・AMH値が低い場合

推奨される治療の流れ(例)

① 片側閉塞であっても体外受精を優先的に検討
 ↓
② FTよりも体外受精の方が時間効率が高い
 という判断になることが多い

女性の年齢が34歳以下であれば、一般的にはタイミング法と人工授精にそれぞれ半年ずつかけてもよいとされていますが、35〜39歳であればタイミング法と人工授精は合わせて半年が望ましく、40〜42歳であれば初めから体外受精を検討することが妊娠に向けた早道です。

片側卵管閉塞でも妊娠できる?FTは必要?両側との違いと治療の選択基準を解説

パートナーの精子所見との組み合わせで変わる判断

片側閉塞の場合、パートナーの精子所見によっても治療の優先順位が変わります。

精子所見片側閉塞との組み合わせの判断
正常所見タイミング法・AIH→FTの順で検討
軽度〜中等度の問題AIH+FTを組み合わせて検討
重度の問題(乏精子症・無力精子症など)顕微授精(ICSI)+体外受精を優先
抗精子抗体陽性体外受精を優先

精液検査はパートナーにとって負担の少ない検査です。片側閉塞と診断された早い段階で精液検査を受けることが推奨されます。

片側閉塞と診断されたらまず確認すること

担当医に確認すべき5つのポイント

① 閉塞の部位はどこか
 (間質部〜峡部か・卵管采側か)

② スパズム(偽閉塞)の可能性はあるか
 (再検査が必要かどうか)

③ 開通側の卵管の機能は正常か
 (卵管采の状態・繊毛機能の評価)

④ 閉塞の原因は何か
 (クラミジア抗体検査・子宮内膜症の評価)

⑤ 年齢・AMH値・精子所見を踏まえた
 最適な治療方針は何か

二次意見(セカンドオピニオン)を求めることも選択肢のひとつ

片側卵管閉塞の治療方針は担当医によって意見が異なることがあります。「すぐにFTを勧められた」「経過観察でよいと言われた」など、方針に迷う場合はセカンドオピニオンを活用することも大切な選択肢のひとつです。

よくある質問(FAQ)

Q. 片側の卵管が閉塞していますが、タイミング法だけで妊娠できますか?

A. 可能性はあります。開通している卵管側の卵巣から排卵した場合、その卵管で精子と卵子が出会える可能性があります。ただし排卵が閉塞側から起きた周期は妊娠しにくいため、結果的に妊娠できる周期が制限される場合があります。年齢・AMH値・精子所見によって判断が異なりますので、担当医と相談してください。

Q. 片側閉塞でFTを受けた後、もし卵管が再閉塞したらどうなりますか?

A. FTによる卵管開通後に再閉塞が起きた場合は、再FTまたは体外受精へのステップアップを検討します。再FTは保険が適用される場合がありますが、年齢・AMH値を踏まえて担当医と最適な方針を相談してください。術後の卵管再閉塞は3ヶ月で約5%と報告されています。(出典:桜十字ウィメンズクリニック渋谷)

Q. 片側閉塞で反対側の卵管も問題があると言われました。どうすればよいですか?

A. 両側に卵管の問題がある場合は、実質的に両側閉塞に近い状態となります。FTの適応がある部位(間質部〜峡部)であれば両側へのFTを検討できる場合がありますが、年齢・AMH値によっては体外受精を優先することが適切な場合もあります。担当医と詳しく相談してください。

Q. 片側閉塞と診断されましたが、原因はわかりません。FTを受けるべきですか?

A. 原因不明でも閉塞の部位(間質部〜峡部)が確認されていれば、FTの適応を検討できます。まずスパズムによる偽閉塞の可能性を排除するために再検査を受けることをおすすめします。その後、担当医と年齢・AMH値・精子所見を踏まえて治療方針を決めてください。

Q. 片側卵管閉塞でAIHを何周期試みればよいですか?

A. 年齢・AMH値・精子所見によって異なります。34歳以下でAMH値が良好な場合は3〜6周期程度AIHを試みてから再評価することが多いとされています。35歳以上の場合はより少ない周期数でステップアップを検討することが推奨される傾向にあります。一般的には、複数回の人工授精で妊娠に至らない場合、体外受精へのステップアップを検討します。

まとめ

項目内容
片側閉塞とは左右2本の卵管のうち一方だけが閉塞している状態
自然妊娠の可能性開通側の排卵時は可能性あり。ただし妊娠できる機会が減る可能性があります
偽閉塞の確認スパズムによる偽閉塞の可能性があるため再検査が重要
FTが有効なケース間質部〜峡部の閉塞・34歳以下・AMH良好・保険枠温存を希望
FTを急がなくてよいケーススパズムの可能性あり・若年・軽度狭窄・タイミング法を先行できる
体外受精を優先するケース38歳以上・AMH低値・重度男性因子・抗精子抗体陽性
必ず確認すること閉塞部位・偽閉塞の可能性・開通側の機能・精液検査の結果

参考)

※本記事の情報は一般的な医学知識に基づいており、個々の症状・治療方針については必ず担当医にご相談ください。 ※本記事の情報は作成時点のものです。制度・費用は変更される場合があります。最新情報は担当クリニックにご確認ください。

助産師より

片側卵管閉塞と聞くと、「自然妊娠は難しいのかな」「すぐに体外受精になるのかな」と不安になる方も多いと思います。

ですが、片側の卵管が開通している場合は、自然妊娠できる可能性が残されているケースもあります。また、HSGで“閉塞”と診断されても、実際には卵管けいれん(スパズム)による一時的な通過障害だったということもあります。

一方で、不妊治療は「何を優先するか」がとても大切です。

・できるだけ自然妊娠を目指したい
・体外受精の保険回数を大切に使いたい
・年齢的に時間を優先したい
・まずはAIHから試したい

など、ご夫婦によって大切にしたいことは違います。

だからこそ、「片側閉塞だからこの治療が正解」と一つに決めつけるのではなく、年齢・AMH値・精子所見・卵管の状態などを踏まえて、自分たちに合った方法を選んでいくことが大切です。

妊活や不妊治療は、身体だけでなく心にも負担がかかりやすいものです。不安や迷いがある時は、一人で抱え込まず、医師や助産師、看護師に相談してくださいね。

あなたに合った選択肢を、一歩ずつ見つけていけますように。

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