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【助産師が徹底解説】妊娠のプロセス「着床・着床出血」の解説と過ごし方

[2022.11.07]

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望む妊娠という言葉には、実はいくつものプロセスが含まれています。そのプロセスのひとつが着床です。今回は着床・着床出血についての解説と不安な時期の過ごし方について解説していきます。

着床とは?

ず最初に、着床とは、卵管から移動してきた受精卵が子宮内膜に到着し、中にもぐりこむまでをいいます。受精卵を赤ちゃんの種、子宮内膜を赤ちゃんをはぐくむ土とすると、着床は土にまかれた種が根をおろし始めた状態と言えるでしょう。受精卵は、ふかふかの子宮内膜の中ですくすく成長していきます。着床することで、お母さんの体から酸素や栄養をもらうための胎盤のもと(絨毛)も作られていきます。

着床とは?

着床のタイミング(受精から着床まで)はいつ起こるの?

次に、着床はどのタイミングで起こるのでしょうか?体の外からはわかりませんが、体内では奇跡の連続が起こっています。自然妊娠と胚盤胞に分けて、受精から着床までのプロセスをみてみましょう。

① 自然妊娠の場合

妊娠は、卵子と精子が出会い受精するところから始まります。

  • 排卵

    卵子は、約1か月に1回、左右どちらかの卵巣から卵管に向けて飛び出します。

  • 受精

    排卵によって飛び出した卵子と、射精された精子が卵管で出会うと受精し、受精卵となります。

  • 受精卵の移動

    受精卵は成長しながら、子宮を目指して卵管を進みます。

  • 着床

    精卵が子宮内膜に到着すると着床が始まります。着床すれば、妊娠成立です。

実は精子が卵管までたどり着くには膣から子宮を通って卵管を進む必要があり、ほとんどの精子が途中で力尽きます。射精された精子は2~4億個ほど(個人差あり)ですが、卵子のいる卵管の一番奥にたどり着くころには60~200個ほどに数が減ります。

さらに排卵された卵子の寿命は約24時間、精子は約72時間といわれているため、タイミングが合わないと受精には結びつきにくいのです。

② 「胚盤胞」の着床時間

胚盤胞(はいばんほう)は受精卵が成長したもので、丸い卵の状態から着床ができる状態に変化していく段階です。受精卵が卵管から子宮へと移動する間、受精卵の中では細胞が2分割、4分割、8分割と分裂を繰り返してどんどん増え、受精から3日目頃には桑実胚(そうじつはい)と呼ばれる状態になります。

たくさんの細胞が詰まった桑実胚は、胎盤と胎児になる部分に分かれていき、5日目頃にはその境界がはっきりわかるようになります。この状態が胚盤胞です。

そして受精から6日目ごろに胚盤胞が子宮内膜に到着し、着床が始まります。

「胚盤胞」の着床時間?

着床すると起こるサインと体の変化

「着床」することで、体に下記のような変化がみられることがあります。ただし、症状には個人差があり、なにも症状がない場合も少なくありません。症状がないことを気に病まないでくださいね。

「おりもの」

「着床」が起こる時期は、次回の生理予定日の数日前です。この時期のおりものは粘り気があり、色が白っぽくなります。

「着床」のサインとしては、おりものに少量の血が混じったり、ピンクや茶色になったりする場合があります。

下痢・腹痛・頭痛・吐き気

「受精卵」が着床して胎盤が作られ始めると、hCGホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが分泌されます。妊娠検査薬で陽性が出るのは、尿中に現れたhCGホルモンが反応するためです。

「hCGホルモン」は、女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンの分泌を増やす働きを持ち、このホルモンの変化が下痢・腹痛・頭痛・吐き気などの症状を引き起こすことがあります。

ただ、これらの症状は生理前にみられる症状でもあるため、着床のサインではない可能性もあります。

痛み

「着床」時に、着床痛という下腹部の痛みが起きると聞いたことのある人もいるかもしれません。

しかし、これは医学的には存在しないものです。子宮の収縮やお腹の冷えなど、下腹部に痛みが起きる原因はいろいろありますので、痛みの有無で着床を判断することは難しいでしょう。

着床時期はどんなことに注意して過ごせばいいの?

「着床」すると胎盤ができ始め、お母さんから酸素や栄養をもらうようになっていきます。それと同時に、アルコールや薬の成分、一部のウイルスなど、赤ちゃんにとって有害なものも入れるようになります。

そのため、着床時期を含め、妊娠の可能性がある場合には下記の行動を避けましょう。

  • アルコールの摂取
  • 喫煙
  • 自己判断での薬の内服
  • 家族との食器やお箸などの共有

また、転倒や落下、接触などの危険性のある運動や激しい運動も避けたほうが望ましいでしょう。具体的には、下記のスポーツが該当します。

  • サッカー
  • バスケットボール
  • ホッケー
  • ボクシング
  • レスリング
  • スキー
  • ハングライダー
  • スキューバダイビング
  • 激しいラケットスポーツ
  • 乗馬
  • スケート

など

「着床」時期は、ヨガやピラティス、ウォーキングなどで心身をリラックスさせ、ゆったりと過ごすことを心がけましょう。

着床時期はどんなことに注意して過ごせばいいの?

「着床」の確率は何%ですか?

「受精卵」が無事に着床する確率は何%なのか、気になる方も多いでしょう。

「自然妊娠」で着床する確率を知ることは難しいですが、排卵日あたりに避妊をしないでセックスをした場合の妊娠率は、20代前半で30%、30歳で20%、35歳で10%といわれています。思ったより確率が低いと感じるかもしれません。

年齢とともに妊娠率は低下していくため、30代に入ると不妊治療を選択される方が増えます。不妊治療の中で、精子や卵子を体外に取り出して体外で受精させる治療法が生殖補助医療です。

「生殖補助医療」(ART:体外受精・顕微授精法・胚移植・凍結胚移など)を受けた場合の妊娠率をみてみましょう。

女性の年齢 妊娠率
30歳 28%
35歳 26%
40歳 16%
45歳 3%

(日本産科婦人科学会 2020年ARTデータブックより)

このように、受精卵が着床し、妊娠が成立する確率は年齢との関係が大きいことがわかります。

「着床」で起こるトラブルはどんなことがあるの?

「着床」は、子宮体部(子宮の上2/3ほど)の子宮内膜で起こりますが、稀に違う場所で受精卵が育ってしまう場合があります。この場合を異所性妊娠(子宮外妊娠)といいます。

異所性妊娠は卵巣や子宮頸部などで起こることもありますが、卵管で起こる場合がほとんどです。気づくのが遅れてしまうと、成長した受精卵によって卵管が破れてしまい、命に関わる場合があります。

「自然妊娠」だけでなく、生殖補助医療での妊娠も異所性妊娠の可能性はあります。

もし、赤ちゃんの着床が確認できていない時期に出血や下腹部の痛みが続く場合は病院を受診しましょう。

「着床出血」について知りたい

「受精卵」が子宮内膜に着床するとき、出血が起こることがあります。これが着床出血です。

前回の生理開始日から約3週間後(生理周期が28日の場合)にみられます。出血の量は生理よりも少なく、おりものがピンクや茶色になる程度の場合もあります。

全員に起こるものではありません

「着床出血」は必ず起こるものではないため、着床出血の有無で妊娠を判断することはできません。生理周期が早まったり、排卵出血であったりするケースがあることを知っておきましょう。

「着床出血」と生理出血の違いと見分けるポイントを解説

「着床時期」と生理開始時期は1週間ほどの違いのため、どちらか迷うこともあるかもしれません。見分け方のポイントをみてみましょう。

  • 出血の期間

    着床出血は1~2日程度であることが多いですが、生理による出血は3~7日以内です。

  • 出血の色

    着床出血は赤や薄いピンク、茶色で、生理による出血は濃い赤や茶色です。

  • 出血の量

    着床出血は、小さな受精卵が子宮内膜にもぐりこむときに起こる出血なので少量です。生理では、厚くなった子宮内膜がはがれ落ちるため、出血の量が多くなります。

  • 基礎体温

など

出血が着床によるものか、生理によるものかを判断する方法として、基礎体温のチェックがあります。

「基礎体温」は、排卵後に高温期になり、生理が始まると低温期になります。そのため、出血が起きた日に低温期になっている場合には、生理である可能性が高いです。出血が起きた日から数日経っても高温期が続く場合は妊娠の可能性があります。

「基礎体温」は毎日測り続けることで、高温期や低温期の変化がわかるため、日ごろから基礎体温を測って記録する習慣をつけておくことが大切です。

「着床出血」と生理出血の違いと見分けるポイントを解説

妊娠超初期に起こる不正出血について知りたい

妊娠3週目までを妊娠超初期と呼ぶ場合がありますが、この時期は妊娠しているかどうか確認ができません。そのため、妊娠超初期の不正出血は妊娠によるものである場合と、それ以外の病気やホルモンバランスの異常などである場合があります。

「不正出血」とは

「不正出血」とは、病気やホルモンの異常などにより生理以外の理由で性器から出血することをいいます。妊娠に関連するものも含まれます。

「不正出血」が起こる婦人科系のさまざまな疾患の解説

「不正出血」が起こる病気を知っておきましょう。病気の症状がある場合には、早めに病院を受診しましょう。

  • 絨毛膜下血腫

    絨毛膜は、赤ちゃんを包む卵膜(3層の膜)の中間の層です。絨毛膜下血腫は、この絨毛膜と外側の層(脱落膜)の間に血が溜まった状態をいいます。不正出血や子宮の収縮の原因となります。

  • 異所性妊娠(子宮外妊娠)

    卵管や子宮頸部、卵巣など、子宮体部の子宮内膜以外に受精卵が着床した状態です。不正出血や下腹部の痛みなどの症状が現れます。妊娠5~8週頃に症状が出ることが多く、卵管妊娠の場合には破裂の危険性があります。

  • 胞状奇胎

    胞状奇胎は受精のときに異常が起こり、胎盤のもとになる絨毛がたくさんのつぶつぶ(のう胞)となって増えていく状態です。不正出血やつわりのような症状がみられます。正常な妊娠ではないため、子宮内容除去術という手術が必要です。胞状奇胎は、異常な絨毛が子宮の筋層や血管に入り込んでしまう侵入奇胎や、がん化して絨毛がんになることがあり、抗がん剤を使った治療が必要になる場合があります。

  • 子宮膣部びらん

    子宮膣部びらんは、子宮の入り口部分が赤くただれた状態です。病気ではありませんが、初期の子宮頸がんの場合があります。1年に1回は子宮頸がん検診を受けましょう。

  • 子宮頸がん

    子宮頸がんは、子宮頸部(子宮の下1/3ほど)にできるがんです。20歳代後半から増え始め、30歳代後半からピークに入ります。早期にはほとんど症状はありませんが、進行すると不正出血や性交時の出血、下腹部の痛みなどがみられます。子宮頸がんの主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染です。ワクチン接種を受けることで予防できます。

  • 子宮頸管ポリープ

    子宮頸管ポリープは、子宮頸部の組織の一部がいぼのように膨らんだ状態です。無症状であることが多いですが、出血や感染の原因となる場合があります。

  • 子宮筋腫

    子宮筋腫は子宮にできる良性の腫瘍です。大きさや筋腫ができる位置によって症状が違いますが、生理時の出血量が多くなる、月経痛がひどいなどが主な症状です。妊娠しにくい、流産しやすいなどの原因になる場合もあるため、適切な治療を受けることが必要になります。

助産師からのメッセージ

助産師 中友里恵

中友里恵

「着床」は、妊娠において重要なステップです。

体のサインに気づく方もそうでない方も、体の中では赤ちゃんが育っていくために大きな変化が起きています。

体のサインの有無に敏感になりすぎてもストレスや不安につながることがあるので、まずは体調に合わせて体を休ませたり、妊娠検査薬で判定ができる時期まで待ってみましょう。自身の場合は、下腹部がチクチクする感じや、ほてり、眠気などの体の変化を感じました。また、着床出血はありませんでした。出血は妊活をしているととても敏感になってしまいますよね。

「妊娠初期」は少量の出血がみられることは珍しいことではありません。生理が来たと思ったら1日で出血が止まり、妊娠していたケースもあります。

生理開始予定日から1週間程度は様子を見てみましょう。1週間をすぎて、妊娠反応がある様であれば、病院を受診してみてくださいね。

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