卵管鏡下卵管形成術(FT)とは|手術の流れ・費用・術後・妊娠率までを解説

「卵管が詰まっていると言われた」「FTという手術を勧められたけれど、どんな手術なの?」——そんな疑問を持つ方に向けて、この記事ではFT(卵管鏡下卵管形成術)について、基本から術後の生活まで一気通貫で解説します。

この記事でわかること:

  • ・FT(卵管鏡下卵管形成術)とは何か・どんな方が対象か
  • ・手術の流れと当日の過ごし方
  • ・費用・保険適用・高額療養費制度の使い方
  • ・術後の妊娠率と妊活の再開時期
  • ・FTと体外受精・AIHとの違い・選択基準

本記事は、日本産科婦人科学会のガイドラインおよび各専門クリニックの臨床情報をもとに、不妊治療専門医の立場から作成しています。

FT(卵管鏡下卵管形成術)とは

FT(卵管鏡下卵管形成術)とは、閉塞または狭窄した卵管をカテーテルとバルーンを使って内側から広げ、卵管の通過性を回復させる手術です。

メスを使わず膣からカテーテルを挿入するため、お腹を切らずに日帰りで受けられる低侵襲な手術です。2022年4月から保険適用となり、費用負担を大幅に抑えられるようになりました。

卵管の役割と閉塞が起きる理由

卵管は、卵子と精子が出会い受精する場所であり、受精卵を子宮まで運ぶ重要な臓器です。卵管が閉塞または狭窄すると、精子と卵子が出会えず自然妊娠が困難になります。

卵管閉塞・狭窄の主な原因は以下のとおりです。

原因内容
クラミジア感染症代表的な要因のひとつ。無症状のまま卵管に炎症・癒着を引き起こします
子宮内膜症卵管周囲の癒着が卵管閉塞を招く場合があります
骨盤内炎症性疾患(PID)子宮・卵管周囲の感染・炎症が原因となる場合があります
過去の手術・腹膜炎術後の癒着が原因になる場合があります
原因不明明らかな原因がなく狭窄が起きる場合もあります

不妊症の原因全体に占める卵管通過障害(卵管因子)の割合は約30%前後とされています。卵管通過障害が原因の場合、治療をしなければ自然妊娠の確率は大きく低下するとされています。

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FTで改善できること・できないこと

改善できること改善できないこと
間質部〜峡部の卵管閉塞・狭窄卵管采(末梢側)の完全閉塞(→腹腔鏡手術が適応)
バルーンで広げられる程度の狭窄卵管水腫(→体外受精または腹腔鏡手術が適応)
クラミジア感染後の軽度〜中等度の癒着重度の子宮内膜症による高度癒着

FTの対象となる方・ならない方

対象となる方(FTが有効なケース)

  • ・HSG(子宮卵管造影検査)で卵管閉塞・狭窄が確認された方
  • ・特に間質部〜峡部(子宮側)の閉塞がある方
  • ・クラミジア感染の既往がある方
  • ・自然妊娠・AIHでの妊娠を強く希望している方
  • ・体外受精の保険枠を温存したい方
  • ・年齢が比較的若く(34歳以下)、卵巣予備能が良好な方

対象とならない方(FTが向かないケース)

  • ・急性の骨盤内感染症・クラミジア感染中の方
  • ・卵管采(末梢側)の完全閉塞がある方
  • ・重度の子宮内膜症による高度癒着がある方
  • ・卵管水腫の重症例
  • ・38歳以上でAMH値が低い方
  • ・重度の男性因子不妊を合併している方
  • ・抗精子抗体陽性の方

女性の加齢(38歳以上)、残存する卵子数減少(AMH低値)、子宮内膜症など他の因子がある場合は、FTは勧められないとされています。

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FT手術の流れ

術前の準備・検査

FTを受ける前に以下の検査が必要です。

検査内容
子宮卵管造影検査(HSG)卵管の閉塞・狭窄部位の確認
血液検査感染症(クラミジア・梅毒・B型肝炎・C型肝炎・HIV)・凝固機能・血液型 など
超音波検査子宮・卵巣の状態確認
妊娠確認手術前は避妊が必要

手術は月経終了後から排卵前(月経周期7〜12日目頃)に行います。

手術当日の流れ

来院・受付
 ↓
術前確認・更衣
 ↓
麻酔(局所麻酔または静脈麻酔)
 ↓
手術(15〜30分)
 ・膣からカテーテルを挿入
 ・卵管入口を確認
 ・バルーンを卵管内に進めて閉塞部位を拡張
 ・卵管鏡で内腔を確認
 ↓
術後安静(1〜2時間)
 ↓
状態確認・帰宅

FTカテーテルは直径約1mmという極細のものを使用し、卵管鏡(内視鏡)で内部を直接確認しながら処置を行います。

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麻酔の方法

麻酔の種類特徴
局所麻酔下腹部に直接麻酔をかける方法。意識はあります
静脈麻酔点滴で薬を入れ眠った状態で処置。覚醒が速い薬剤を使用。術後の車の運転は不可
両方の併用局所麻酔と静脈麻酔を組み合わせる。多くの施設で採用されています

当日の車の運転は禁止です。付き添いの方と来院することをおすすめします。


FTの費用・保険適用

保険適用について

FTは健康保険の適用対象です。3割負担時の費用目安は以下のとおりです。

術式3割負担時の費用目安
片側FT約13〜15万円
両側FT約27〜30万円

※クリニックや術式・麻酔方法によって異なります。詳細は受診先にご確認ください。

高額療養費制度の活用

両側FTは27〜30万円前後かかりますが、高額療養費制度を活用することで自己負担額を大幅に抑えられる可能性があります。年収約370〜770万円(区分ウ)の方の場合、1ヶ月の自己負担上限は約83,430円となります。(令和8年5月現在)

事前に限度額適用認定証を取得するか、マイナ保険証を活用することで窓口での支払いを上限額に抑えられます。

民間医療保険の手術給付金

FTは民間の医療保険(手術給付特約付き)の手術給付金の対象となるのが一般的とされています。加入している保険会社に「卵管鏡下卵管形成術を受ける予定だが、手術給付金の対象になるか」を事前に確認することをおすすめします。

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FTの効果・妊娠率

卵管開通率

一部報告では、FT後の卵管開通率は80〜90%前後とされています。ただし、卵管障害の程度によっては開通しない場合や、開通後に再閉塞する場合があり、一定期間後に再評価が必要となることがあります。。個人差がありますので、担当医にご確認ください。

術後の妊娠率の目安

期間妊娠率の目安
術後3ヶ月以内約30〜35%程度とされています※
術後6ヶ月以内約35〜50%程度とされています※
術後6ヶ月経過後体外受精へのステップアップを検討する時期

※妊娠率は年齢・個人の状態によって大きく異なります。上記はあくまで目安です。

FTを受けてから妊娠までの経過時間は平均3〜4ヶ月とされています。FT後6ヶ月経過しても妊娠しない場合には、体外受精を考慮することが一般的です。

FT後は卵管機能が完全に正常化するとは限らず、異所性妊娠(子宮外妊娠)のリスクに注意が必要です。妊娠判定後は早めの受診が推奨されます。

開通後に卵管再閉塞が起こることがあります。

妊娠率に影響する要因

要因内容
年齢年齢が上がるほど妊娠率は低下するとされています
AMH値卵巣予備能が低い場合は妊娠率に影響する場合があります
卵管の状態クラミジア感染の既往がある場合、卵管機能が回復しないこともあります
男性因子パートナーの精子所見も妊娠率に影響する場合があります

FT・AIH・体外受精の違いと選択基準

3つの治療法の比較

項目FTAIH(人工授精体外受精(IVF)
保険区分手術一般不妊治療生殖補助医療(ART)
回数制限なしなし6回または3回
卵管を使うか使う(開通が前提)使う使わない
身体的負担中(日帰り手術)高(採卵・移植)
費用中(保険適用)低(保険適用)高(保険適用)
1回あたりの妊娠率目安術後6ヶ月で30〜50%程度とされています※5〜10%程度とされています※20〜40%程度とされています※

※妊娠率は年齢・個人の状態によって大きく異なります。

FTを選ぶメリット

✅ 自然妊娠・AIHでの妊娠の可能性が生まれる場合があります
✅ 体外受精の保険枠(6回・3回)を消費しません
✅ 身体的・経済的負担を体外受精より抑えられる可能性があります
✅ 卵管の状態を内視鏡で直接確認できる(診断としても有用)

FTは体外受精の保険回数にカウントされません。詳しくは不妊治療の保険適用回数の数え方をご覧ください。

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FT術後の生活と妊活

生活再開の目安

行動再開の目安
デスクワーク・軽い家事術後翌日〜(個人差があります)
シャワー浴術後翌日〜(出血が落ち着いていれば・個人差があります)
湯船への入浴術後数日〜1週間(出血が止まってから)
性行為術後1〜2週間(担当医の許可後)
妊活(タイミング法)再開担当医と相談

妊活のステップ

術後は以下の流れで妊活を進めます。

術後翌周期〜(担当医と相談)
 タイミング法・AIHを積極的に実施

術後3〜6ヶ月
 最も妊娠しやすい時期と言われている
 基礎体温・排卵検査薬・超音波で
 排卵タイミングを把握

術後6ヶ月経過しても妊娠しない場合
 再FTまたは体外受精へのステップアップを検討

※FT後は卵管機能が完全に正常化するとは限らず、異所性妊娠(子宮外妊娠)のリスクに注意が必要です。妊娠判定後は早めの受診が推奨されます。

FTに関するよくある質問(FAQ)

Q. FTはどこのクリニックでも受けられますか?

A. FTは特殊な器具と技術を要する手術のため、実施可能な施設が限られます。事前にFTの実施実績があるクリニックかどうかを確認してから受診することをおすすめします。

Q. FTは何歳まで受けられますか?

A. FT単体での年齢制限は現行の保険制度では設定されていません。ただし、38歳以上でAMH値が低い場合は時間的な観点から体外受精が優先されることが多いとされています。担当医と相談のうえ判断してください。

Q. FTを受けても卵管が開通しなかった場合はどうなりますか?

A. 開通しなかった場合は体外受精へのステップアップを検討します。なお、FTで開通しなかった場合も費用は発生します。事前に担当医から説明を受けたうえで手術に臨んでください。

Q. FTを受ける前にHSG検査は必ず必要ですか?

A. HSGなどで卵管閉塞・狭窄を確認したうえで適応を判断します。他院でのHSG結果があれば持参することで検査を省略できる場合があります。

Q. FTは痛いですか?

A. 静脈麻酔を使用する場合は処置中の痛みはほとんど感じないことが多いとされています。麻酔の方法・個人差によって感じ方は異なりますので、不安な場合は事前に担当医に麻酔方法について相談することをおすすめします。

まとめ

項目内容
FTとは閉塞・狭窄した卵管をバルーンで広げる低侵襲な日帰り手術
対象HSGで卵管閉塞・狭窄が確認された方(特に間質部〜峡部)
保険適用保険適用。高額療養費制度も活用が可能
卵管開通率一部では約80〜90%と報告されています(個人差があります)
術後妊娠率術後6ヶ月以内で30〜50%程度とされています(個人差があります)
保険枠体外受精の回数にカウントされません
術後妊活術後翌周期から再開可能(担当医と相談のうえ)

参考文献・エビデンス

※本記事の情報は一般的な医学知識に基づいており、個々の症状・治療方針については必ず担当医にご相談ください。 ※本記事の情報は作成時点のものです。制度・費用は変更される場合があります。最新情報は担当クリニックにご確認ください。

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助産師より

FTや不妊治療という言葉を聞くと、「手術」「費用」「この先妊娠できるのかな…」と、不安な気持ちになる方も多いと思います。

特に卵管の問題は、自覚症状がほとんどないまま初めて検査で知る方が多く、突然の結果にショックを受けることも少なくありません。

ですが、卵管閉塞・狭窄にはさまざまな程度があり、現在はFTや体外受精など治療の選択肢も広がっています。すぐに「もう自然妊娠は難しい」と決まるわけではありません。

また、不妊治療は「早く結果を出さなきゃ」と気持ちが焦りやすい一方で、心や体への負担も大きくなりやすいものです。治療方法だけでなく、「自分たちがどんな妊活を望むのか」をパートナーと共有することもとても大切です。

わからないことや不安があれば、一人で抱え込まず、担当医・助産師・看護師など医療者に相談してくださいね。あなたに合った選択肢を一緒に考えていくことが大切です。

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