着床不全検査
着床不全検査
子宮内環境が悪いと着床(胚が子宮内膜と接着すること)がうまく行われません。胚移植を何回か行って、良好胚を繰り返して移植しても妊娠に至らない場合、子宮内環境の異常が着床を妨げている可能性があります。
外来受診の上医師にご相談下さい。
当院では当院で採卵移植される患者様だけでなく、他院での移植予定の患者様も検査ができるように対応しています。
子宮内膜着床能検査(ERA)®
ERAは子宮内膜が着床に適した状態となる一時的な時期、プロゲステロン開始から約5日後の時点で、子宮内膜に着床能が認められるかどうかを判定する分子生物学的検査です。この検査方法は、子宮内膜組織における248個の遺伝子についてNGS(次世代シーケンサー)を用いて検査を行い、内膜組織の中にその遺伝子の発現を確認し胚移植に適した時期かどうかを確認するものです。発現すべき遺伝子が遅れて出現する場合には移植を後にずらす、早く出現する場合は前にずらす、などの治療を行います。結果として胚移植による妊娠成功率を高める(25%アップ)ことができます。自然周期でもホルモン補充周期でも検査は実施できますが、検査は移植する施設と同様のプロトコールで実施する必要があります。結果は4週間ほどかかります。
子宮内膜マイクロバイオーム検査(EMMA)®
子宮内はもともと無菌状態と考えられていましたが、近年、子宮内にも細菌が存在していることが分かりました。2016年アイジェノミクス社の報告によると、体外受精での妊娠成功群と不成功群で、子宮内膜にラクトバシルス族の割合が90%以上の群と90%未満の群で妊娠率に有意な差があることが分かりました。EMMAは子宮内膜の細菌の種類と量を調べます。子宮内の細菌環境が胚移植に適切な状態であるかどうかを判定します。
・検査法
子宮内膜を採取します。時期はいつでも可能ですが、ERAと同時に行うと1回で済みます。子宮内膜の細菌の種類と量を測定し、バランスが正常化どうかを調べます。ラクトバシルスが少ない場合は、膣剤により治療を行います。結果は4週間ほどかかります。
慢性子宮内膜炎検査(BCE)
以前までは子宮鏡検査(HPY)で慢性子宮内膜炎の診断がなされていましたが、偽陰性(本当は内膜炎なのに正常と判断すること)が多く、新たな検査が望まれていました。当院での検査は、内膜の基底層にある組織を採取してCD138という特殊な免疫染色を行って、内膜組織内に形質細胞が20視野に5個以上あれば、陽性と判断して適切な抗生剤を投与します。結果は2週間ほどかかります。
銅亜鉛検査
銅亜鉛は、ビタミンと並んでミネラル物資として人間には必要なものです。銅はレバーや干しエビ、甲殻類の多く含まれており、亜鉛は牡蠣や牛肉に多く含まれています。銅亜鉛が注目されるようになったのは、銅を体外にうまく排出できない疾患であるwillson病の婦人が不妊症や不育症である率が高く、その方に亜鉛のサプリメントを内服してもらったところ、血中の亜鉛が増え、銅が減り妊娠出産に至ったという報告があります。
・検査法
銅亜鉛の採血を行い、銅が基準以上あれば、亜鉛のサプリメントの内服を推奨しています。結果は1週間ほどかかります。
子宮収縮検査(エコー動画)
月経周期中の子宮収縮には変化があります。月経中は子宮の内膜は上から下に動いて月経血の排出を助け、排卵期は、子宮の内膜は下から上に動いて精子の受け入れを助け、着床期は動きが止まり受精卵を待っている状態となります。
・検査法
着床期にエコーを3分間撮影し、10倍速で分析する。子宮が収縮していれば、子宮収縮抑制剤の内服を推奨しています。結果は1週間ほどかかります。
ビタミンD検査
ビタミンDが低下していると、着床率が低下することが報告され、また妊娠中にも補充が必要であることが示されています。ビタミンDが低ければ、ビタミンDサプリメント(ビタミンDサプリメント1000~6000IU/日)を内服し補うことを推奨しています。
・検査法
血中の25ヒドロキシビタミンD濃度を調べます。
G-CSF
G-CSF(顆粒球コロニー形成刺激因子)は、主に造血機能を刺激する目的で使用される治療法です。元々、骨髄抑制を伴う患者やがん治療後の回復を促進するために使用されていましたが、近年では不妊治療にも応用されるようになっています。
一部の女性では、薄い子宮内膜が原因で胚の着床が困難になることがありますが、G-CSFは子宮内膜の血流を促進し、内膜の厚さを改善する効果が期待されています。
また、免疫系に対しても調整作用を持ち、着床を妨げる免疫反応を抑える可能性があります。これにより、胚の着床がよりスムーズに行われるよう支援します。