【専門家が解説】 胚盤胞のグレードと移植方法とは?
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詳しくはこちら体外受精や顕微授精を受ける中で、胚盤胞のグレード・胚盤胞移植など聞きなれない言葉を耳にする機会が増えるでしょう。それぞれ、不妊治療をステップアップするうえで知っておきたい言葉です。今回は、胚盤胞のグレードと移植方法について詳しく解説します。
胚盤胞とは
受精卵(胚)は、受精してから細胞分裂を繰り返し、1個の細胞が2個、4個、8個と増えていきます。さらに増えた細胞は、胎児と胎盤になる部分に分かれた状態に変化するのです。この変化によって、受精卵は下記のように呼び方が変わります。
初期胚
初期胚とは、受精から1~3日目頃の受精卵で、細胞が2~8個に分裂した状態をいいます。初期胚のうち、受精翌日のものは「前核胚(ぜんかくはい)」、受精後2~3日のものは「分割胚(ぶんかつはい)」と呼ばれます。
胚盤胞
「胚盤胞(はいばんほう)」とは、受精から5日目頃の受精卵で、着床の準備が整った状態をいいます。胚盤胞になる前の段階(桑実胚)では、胚の中は細胞分裂で増えた細胞で満たされています。そこから胎児になる部分と胎盤になる部分に分かれ、胚盤胞となるのです。
自然妊娠の場合には、受精から5日目頃に卵管から子宮内に受精卵が到着し、胚盤胞となった受精卵が着床を始めます。
受精卵について
卵子の中に精子が入ると受精卵となりますが、受精卵がすべて良好に成長するわけではなく、残念ながらうまく育たない場合もあります。その違いを見てみましょう。
良好な受精卵とは
受精卵は、卵の中で細胞分裂を繰り返し起こり、細胞が増えていきます。順調に分裂を繰り返し、分裂した細胞(割球)の大きさが均一で、フラグメンテーションと呼ばれる細胞のかけらが少ないほど、良好な受精卵です。
良好な受精卵は妊娠率が高いため、より良好なものを選んで移植が行われます。
形態不良な受精卵とは
割球の大きさにばらつきがあったり、フラグメンテーションが多かったりする場合、形態不良な受精卵と判断されます。
胚盤胞のグレードとは
胚盤胞は、胎児になる細胞と胎盤になる細胞がはっきり分かれ、細胞のない「胚盤胞腔(はいばんほうくう)」という空間ができます。
この胚盤胞腔の大きさや胚盤胞の成長段階によって、6つのグレードに分類されます。これがGardner(ガードナー)の分類です。
<Gardner(ガードナー)の分類>
グレード1 | 胚盤胞腔が胚の半分未満 |
グレード2 | 胚盤胞腔が胚の半分を超える |
グレード3 | 胚盤胞腔が胚全体に達する |
グレード4 | 胚盤胞腔が広がり、透明帯(胚の外側を包む膜)が薄くなる |
グレード5 | 胚盤胞の一部が透明体から出始める |
グレード6 | 胚盤胞が透明体から完全に出る |
さらにこの分類に加えて、胚盤胞内の胎児になる部分と胎盤になる部分のそれぞれの細胞数からグレード分けされます。
胎盤になる部分(右側の値) | ||||
密で細胞数が多い | まばらで細胞数が少ない | 細胞数が非常に少なく大きい | ||
胎児になる部分(左側の値) | 密で細胞数が多い | AA | AB | AC |
まばらで細胞数が少ない | BA | BB | BC | |
細胞数が非常に少なく大きい | CA | CB | CC |
グレードの評価は病院によって異なりますが、3BB(胚盤胞腔が胚全体に達する段階で、胎児になる部分と胎盤になる部分がどちらもまばらで細胞数が少ない状態)以上の胚(AAに近いもの)を良好な胚とする病院が多いです。
しかし、良好な胚でなければ妊娠できないわけではなく、BCやCCなどCが付く状態の場合にも妊娠にいたる場合があります。
胚盤胞のグレード別妊娠率
胚盤胞のグレード別の妊娠率を見てみると、グレード4が最も高く、ついでグレード3、グレード2、グレード1と妊娠率が下がります。
特にグレード4で、胎児になる部分がAもしくはBと判定された胚は、臨床妊娠率(胎児の心拍が確認できる率)が50%以上と高い結果となります。4AAと4BAでは、臨床妊娠率が60%を超えるという報告もあるほどです。
特にグレード4で、胎児になる部分がAもしくはBと判定された胚は、臨床妊娠率(胎児の心拍が確認できる率)が50%以上と高い結果となります。4AAと4BAでは、臨床妊娠率が60%を超えるという報告もあるほどです。
年齢による胚盤胞のグレードの変化
女性が年齢を重ねると、卵子も加齢の影響を受けます。採卵できる数が減ったり、良好な卵子が少なくなったりします。
しかし、少数でも良好な卵子が採卵できれば、それが良好なグレードの胚盤胞へと成長してくれるかもしれません。胚盤胞のグレード(4AAから3CC)別に母体の平均年齢を見ると、1~2歳差と大きな差は見られません。
ただし、胚盤胞を含め、胚移植あたりの妊娠率は年齢とともに低下します。2020年度の生殖補助医療による妊娠率を調査したデータでは、30歳前後までは45%と高い妊娠率ですが、35歳には40%、40歳では30%を切ることがわかっています。
引用元)日本産科婦人科学会 2020年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績
胚盤胞移植法とは
体外受精や顕微授精を行うとき、初期胚で移植する場合と胚盤胞で移植する場合、両方を移植する場合の3つに分けられます。
- 初期胚移植
初期胚移植は、受精から2~3日目に行う胚移植をいいます。- 胚盤胞移植
胚盤胞移植は、受精から5~6日目に行う胚移植をいいます。- 2段階胚移植
2段階胚移植は、受精から2日目頃に初期胚を移植し、さらに 5日目頃に培養していた胚盤胞を移植する方法です。初期胚によって子宮内膜が胚を受け入れる準備が整えられ、着床しやすくなる効果が期待できます。
胚盤胞移植のメリット
胚盤胞は成長した胚であり、初期胚よりも着床率が高いことがメリットになります。また、胚盤胞移植は、初期胚移植と比べて「異所性妊娠」の確率が低くなります。異所性妊娠は、子宮体部(子宮の上2/3ほど)の内膜とは違う場所で受精卵が育ってしまい、妊娠の継続ができない状態です。卵管で異所性妊娠が起こった場合、卵管が破れ、命に関わることがあります。
胚盤胞移植のデメリット
胚盤胞移植のデメリットとしては、胚が胚盤胞まで育たず、移植ができないケースがあることです。子宮内膜の状態や体調の調整など、移植に向けて準備したことをリセットすることになってしまいます。
胚盤胞移植による染色体異常確率は?
胚盤胞は、グレードによって染色体異常の頻度が変わります。2014年にアメリカで発表された、36歳以上の不妊患者を対象にした研究では、グレードが3AA以上の場合、染色体異常がない割合は56%ですが、3BB未満の場合には25%でした。
また、染色体異常の確率に影響する大きな要因が、母体の年齢です。生殖補助医療を受けた場合の流産率を調査したデータ(2020年度)では、30歳前後までは20%以下ですが、35歳には20%、40歳では30%を超えます。母体の年齢が若いほど、染色体異常が起こりにくいことがわかります。
胚盤胞移植の着床率を上げるには?
胚盤胞の着床率は、移植の方法によって上がることが知られています。また、ストレスと着床率に関係があることもわかっています。それぞれ詳しくみてみましょう。
胚盤胞移植の方法の選択
胚盤胞移植は、新鮮胚移植と凍結胚移植の2種類があります。
- 新鮮胚移植
採卵した周期内に培養した胚を子宮内に戻す方法です。 - 凍結胚移植
採卵して培養した胚を一旦凍結し、別の周期に融解して子宮内に戻す方法です。
この2種類のうち、凍結胚移植のほうが新鮮胚移植よりも着床率が高いことがわかっています。さらに技術の進歩によって、凍結胚移植による着床率は年々上昇しています。
治療法については、夫婦に合ったものを医師と相談していくことが大切です。凍結胚移植が可能か、医師に相談してみるのもいいかもしれません。
ストレスを溜めない
過度なストレスは体に有害であり、健康や老化に影響することはよく知られていることです。そして、着床率にも影響することが研究によってわかっています。着床が成功した人は、着床前と着床時期にストレスホルモン(ストレス刺激によってストレス反応を引き起こすホルモン)の分泌が少なかったという結果が出ています。
そのため、着床率を上げるには、着床時期前後にストレスの少ない生活を送ることが大切です。仕事を調整したり、家事を控えめにしたりと日常の負担を減らすことからはじめてみましょう。夫婦で出かけたり、旅行に行ったりしてリフレッシュするのもいいですね。
助産師からのメッセージ
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中友里恵
胚盤胞移植には、いくつものハードルがあります。良好な卵子が採卵できること、体外で無事に受精すること、胚盤胞になるまで培養できること、グレードの高い胚となること、これらがそろって移植となります。
ハードルを乗り越え、妊娠に結びついたときは喜びもひとしおのはず。その日を迎えられるよう、夫婦で支え合って治療を乗り越えましょう。