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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断されたら自分でできること

[2023.03.13]

多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)と診断されたら、その聞きなれない病名に不安を覚える人も多いでしょう。多嚢胞性卵巣症候群は、生理不順や排卵障害をおこす病気で、不妊の原因になることもあります。もし、診断されたらどうすればいいのでしょうか?多嚢胞性卵巣症候群について、くわしく解説します。

多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS)とは?

多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)は、両側の 卵巣 に腫れや嚢胞化がみられ、生理の異常や不妊などの症状がみられる病気です。妊娠可能な年齢の女性の5~8%に発症するといわれています。

症状としてはっきり出ないこともあるため、知らないうちに発症している場合もあります。不妊相談で病院を受診した際に発見されることの多い病気です。

多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS)の症状

多嚢胞性卵巣症候群の症状としては、下記が挙げられます。

  • 生理の異常

    生理不順や不正出血、生理が3か月以上来ない( 無月経 )などの生理の異常がみられます。ただし、定期的に生理のような出血がおこっているケースでは、異常に気づきにくい場合もあります。

  • 男性化

    男性ホルモンが過剰になることで、毛深くなる、声が低くなる、にきびが増えるなどの症状がみられることがあります。

  • 肥満

    血液中の糖分の濃度を調整する働きをもつ インスリン というホルモンが作用しづらくなり、体重が増え、肥満になる場合があります。欧米人と比べて日本人は頻度が少ないですが、多嚢胞性卵巣症候群の患者のうち、14%程度が肥満例といわれています。

肥満に当てはまるか、BMIを計算しましょう。

BMIは、体重(kg)÷【 身長(m)× 身長(m)】で計算できます。計算したBMIで、下表の体重の分類に当てはめてみましょう。

BMI 分類
18.5未満 低体重(やせ)
18.5以上25未満 普通体重
25以上 肥満
  • 不妊

    ホルモンバランスの異常によって 排卵障害 を引き起こすため、不妊の原因となります。

引用元)厚生労働省 BMI

多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS)の原因

多嚢胞性卵巣症候群の詳しい原因はわかっていません。しかし、脳からの指令と卵巣の反応がうまくかみ合わずに悪循環することや、インスリンに対するからだの反応が悪くなることなど、さまざまな要因が関係していると考えられています。

多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS)を放っておくとどうなるの?

生理不順や無月経の治療をしなかった場合、女性ホルモンのアンバランスによって子宮内膜に悪影響がおよぶ可能性があります。通常の生理では、厚くなった子宮内膜がはがれて、経血として体外に排出されます。

しかし、多嚢胞性卵巣症候群では、子宮内膜がはがれずに厚くなったままになるため、不正出血や生理不順がおこるのです。さらに、その状態が続くと、子宮内膜増殖症(子宮内膜が異常に増殖した状態)や子宮体がんなどのリスクが高くなります。そのため、適切な治療を受けることが大切です。

多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS)の検査と診断

多嚢胞性卵巣の診断には、問診や内診、血液検査が必要です。下記の3つの基準をすべて満たすと、多嚢胞性卵巣症候群と診断されます。

1.月経異常がある

月経異常とは、生理周期や持続期間、出血の量などが正常とは異なる状態です。多嚢胞性卵巣症候群では、無月経、稀発月経(生理周期が39日以上3か月未満の状態)、無排卵周期症(生理のような出血はあるが排卵していない状態)のいずれかがみられます。

2.卵巣に小さな嚢胞がたくさん確認できる

超音波検査で卵巣を見たときに、2~9mmの小さな嚢胞が10個以上並んだ状態が確認できます。ネックレスサインとも呼ばれます。

3.性ホルモンの異常がみられる

男性ホルモンが高かったり、LH( 黄体形成ホルモン )が高いのに対して FSH ( 卵胞刺激ホルモン )が正常であったりするなど、性ホルモンの異常が認められます。血液検査で調べることができます。

引用元)日本産科婦人科学会 多嚢胞性卵巣症候群/高プロラクチン血症の診断と治療

多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS)の治療方法

多嚢胞性卵巣症候群では、妊娠の希望がある場合もない場合も、ホルモンバランスを正常に戻すことが大切です。

そのため、肥満の人(BMIが25以上)はまず減量することが必要です。減量するだけで症状の改善や排卵率が改善することもあります。肥満が改善した人、肥満ではない人は、妊娠の希望の有無によって治療方針が変わってきます。

妊娠の希望がある人

多嚢胞性卵巣症候群は、排卵 がうまくおきない状態になっているため、排卵を促す治療を行い、妊娠を目指します。

治療法としては、まず クロミフェン療法 が行われます。クロミフェンは 排卵誘発剤 のひとつで、飲み薬です。生理5日目から5日間内服し、内服が終了してから5~12日後に排卵がおこります。状態によっては、他の薬を併用する場合もあります。

クロミフェン療法で排卵が改善しない場合にすすめられるのが、ゴナドトロピン療法や腹腔鏡手術 です。

  • ゴナドトロピン療法

    卵巣を刺激するホルモンを注射する方法で、効果が強力です。しかし、副作用として 多胎妊娠 や 卵巣過剰刺激症候群(卵巣を刺激しすぎ、卵巣の腫れや水が溜まるなどの症状がおきた状態)などが発生しやすいです。

  • 腹腔鏡による卵巣の手術(腹腔鏡下卵巣開孔術)

    腹腔鏡を使い、レーザーや電気メスで卵巣に小さな穴をたくさん開け、排卵しやすくする手術です。お腹に大きな傷を作ることなく手術でき、自然な排卵の回復を期待できます。自然排卵が回復する確率は約70%ですが、効果がずっと続かないという欠点があります。

効果が高いのがフェマーラ (一般名:レトロゾール)という薬を使う方法です。クロミフェン療法と同じ内服治療ですが、クロミフェンに比べて排卵率や妊娠・出産できる確率が高いです。

さまざまな治療法がありますが、その人のそのときの状態によって治療法は違ってきます。よりよい治療法を選択できるよう、わからないことは医師に相談しましょう。

妊娠の希望がない人

妊娠の希望がない場合には、排卵を促す治療ではなく、子宮内膜の周期的な変化をおこす治療を行います。多嚢胞性卵巣症候群では、女性ホルモンのアンバランスな状態が続くことで、子宮内膜が増殖した状態が続き、子宮内膜増殖症や子宮体がんなどのリスクが高くなります。そのリスクを下げるための治療として行われるのが、ホルムストローム療法 や低用量ピルの処方です。

  • ホルムストローム療法

    黄体ホルモンの薬を内服し、子宮内膜が周期的にはがれるように促す治療法です。薬を内服している間(10~12日程度)は子宮内膜が厚くなった状態が保たれ、薬の効果が切れるころに出血がおこります。これを定期的に行うことで、子宮内膜の周期的な変化をおこすことができます。

  • 低用量ピル

    低用量ピルは、 経口避妊薬 として使われる薬ですが、子宮内膜の周期的な変化をおこす作用があります。婦人科の治療で使われる場合には LEP と呼ばれ、保険適用となります。

多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS)の予防はできる?

多嚢胞性卵巣症候群の原因はひとつではなく、さまざまな要因が関係してきます。そのため、確立された予防法はなく、早期発見し治療をすることが大切になります。生理周期や生理の期間や量がいつもと違うことが続いたら、早めに病院を受診することが大切です。

多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS)に対して自分でできること

多嚢胞性卵巣症候群は、肥満を改善することで症状や状態が改善することがあります。肥満の改善には、生活習慣の見直しが欠かせません。

食事内容を野菜中心のメニューに見直したり、運動習慣を身につけたりすることが大切です。運動は急に激しいメニューを行うと、体に負担がかかりすぎるため、まずはウォーキングからはじめてみるとよいでしょう。

引用元)厚生労働省 肥満と健康

多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS)に対して自分でできること

助産師からのメッセージ

助産師 中友里恵

中友里恵

多嚢胞性卵巣症候群は、早めに発見し治療することが大切です。どんな病気なのかを知り、もし当てはまる症状があれば、病院を受診しましょう。早めに治療できれば、妊娠への影響も最小限に抑えられることでしょう。

また、定期的に生理が来ていると思っていても、実は排卵がおきていなかったという場合もあるため、1年に1回は病院で婦人科検診を受けると安心です。30代から増える子宮頸がんも、一緒に検診を受けるとよいですね。

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