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不妊の原因に気づきにくい黄体機能不全とは?

[2023.09.16]

不妊症は多くの妊娠を望む夫婦にとって深刻な問題であり、妊娠までの困難な道のりをたどることもあります。さまざまな要因が不妊の原因となり得ますが、その中でも気づきにくい一つの要因が「黄体機能不全」です。黄体機能不全は、女性の月経周期や妊娠の維持に重要な役割を果たす黄体の機能が低下する状態を指します。この状態は、正常な卵子の成熟や着床、妊娠の継続に影響を及ぼす可能性があります。しかし、黄体機能不全は症状がわかりにくいため、多くの人がその存在に気づきません。

この記事では、黄体機能不全の症状や原因、検査方法、治療・改善法について詳しく解説します。黄体機能不全を正しく理解し、早期に適切な対策を講じることで、不妊の原因を少しでも改善できるようになることを願っています。

黄体機能不全とは?


卵巣内で卵胞が20ミリ前後に育つと排卵が起こります。卵胞が排卵後に変化しプロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌し、子宮内膜を成熟させ、受精卵が着床しやすい状態を作り出しているのです。黄体機能不全では、黄体が正常な量のプロゲステロンを分泌できず、その結果、子宮内膜の準備や維持が十分にできなくなります。プロゲステロンの不足は、受精卵の着床が困難になったり、受精卵が着床した場合でも十分な栄養を提供できなくなり、妊娠の継続が難しくなる場合もあるでしょう。また、プロゲステロンの不足は子宮内膜の適切な成長を阻害し、月経周期の不規則や無月経を引き起こすこともあります。

原因はさまざまであり、ホルモンバランスの乱れ、ストレス、栄養不良、過度の運動などが関与する可能性があります。また、年齢や遺伝的要因もリスクです。黄体機能不全は、不妊症や反復流産などの原因となる可能性があるため、適切な検査と診断が重要です。治療には、ホルモンの調整からライフスタイルの改善や栄養状態の調整も大切となります。黄体機能不全の改善には時間がかかる場合もありますが、適切な治療とサポートを受けることで妊娠の可能性が高まる場合もあるでしょう。

不妊の原因に気づきにくい黄体機能不全とは?

黄体機能不全の症状をチェックしてみよう

黄体機能不全の症状は個人によって異なる場合がありますが、以下に一般的な症状のチェックリストを用意しました。自身の症状と比較してみてください。

  • 月経周期の不規則または無月経:月経が予定通りに来ないことや、周期が不規則、しばらく生理がこないことがある。
  • 妊娠困難または流産を繰り返す:自然妊娠が難しく、妊娠しても早期流産を繰り返す
  • 不正出血や過剰出血:月経の間に不正な出血があるか、月経時に通常よりも多量の出血があるか。

これらの症状が当てはまる場合、黄体機能不全の可能性があるため、専門医の診断を受けることをおすすめします。

黄体機能不全の原因

黄体機能不全の原因は複数存在します。以下にいくつかの一般的な原因を解説します。

  • 卵巣の機能低下: 卵巣が正常に機能しない場合、黄体が十分な量のプロゲステロンを分泌することができず、黄体機能不全が引き起こされます。卵巣の機能低下は、年齢や遺伝的な要因によるものや、炎症や手術などの影響が多いです。
  • 卵胞の成熟不良:黄体は卵巣内の卵胞が排卵後に形成されますが、卵胞の成熟が適切に行われない場合、黄体機能不全が発生することがあります。
  • ホルモンバランスの乱れ:黄体機能は複雑なホルモンの調節によって制御され、ホルモンバランスが乱れると、黄体が正常に機能せず、プロゲステロンの分泌が不十分となります。ホルモンバランスの乱れの要因はストレス、栄養不良、体重の変動などです。
  • 薬物や治療の影響:一部の薬物や治療、特に排卵誘発剤やホルモン療法など、女性の生殖系に影響を与える治療法は、黄体機能不全を引き起こす可能性があるので医師との相談が必要です。
  • 遺伝的要因:家族歴や特定の遺伝子の変異が、黄体機能不全の発症リスクを増加させることがあります。

これらは黄体機能不全の一般的な原因の一部です。個々の状況や症例によっては、複数の要因が組み合わさって黄体機能不全が発生することもあります。正確な原因の特定と診断のために、専門医の診察と検査を受けてみましょう。

黄体機能不全の検査内容と診断

不妊、不育、月経不順が主訴としてあれば黄体機能不全が疑われます。検査内容と診断について、以下の情報をご参考ください。

検査内容

  • 基礎体温からの評価:基礎体温の高温相が 10日以下(正常は14日)、低温相から高温相への移行が三日以上かかり、低温相と高温相の差が0.3℃以内。体温の上下が大きいなどの症状から黄体機能不全を疑います。
  • ホルモン検査:血液中のホルモンレベルを測定。主にプロゲステロンの濃度に注目し、排卵後のプロゲステロンレベルが低い場合、黄体機能不全の可能性があります。
  • 子宮内膜評価:子宮内膜生検や超音波検査で評価。子宮内膜の厚さや形態の異常が確認される場合、黄体機能不全が考えられます。

黄体機能不全の診断

黄体機能不全の診断は、上記の検査結果を総合的に評価します。以下は主な診断基準です。

  • 排卵後のプロゲステロンが低い:正常な黄体機能であれば、排卵後のプロゲステロンレベルが一定の基準値の範囲にあることが期待されます。プロゲステロンの数値が低いことが確認される場合、黄体機能不全の可能性が高まります。
  • 子宮内膜の異常:子宮内膜の厚さや形態の異常が確認される場合、黄体機能不全が疑われます。
  • 卵巣の機能低下:卵巣の超音波検査や卵胞数の確認により、卵巣の機能低下が示唆される場合、黄体機能不全が考えられます。
  • その他の排除診断:他の疾患や病態が黄体機能不全に関与していないかを確認するため、必要に応じて追加の検査や評価が行われることもあります。

黄体機能不全の検査と診断は、専門の医師が行います。検査結果や症状に基づいて、適切な治療や対策が立てられるようになります。診断は個別の状況によって異なる場合がありますので、医師との相談をおすすめします。

不妊の原因に気づきにくい黄体機能不全とは?

黄体機能不全の治療


黄体機能不全の治療は、個々の症状や原因に応じてそれぞれ異なります。

  • ホルモン療法:プロゲステロンの補充療法は、黄体機能不全の一般的な治療法です。排卵後のタイミングを見て、プロゲステロンを内服薬や注射で投与します。黄体が適切な量のプロゲステロンを分泌し、子宮内膜の成熟や着床の促進が期待されます。
  • ホルモンバランスの調整: ホルモンバランスの乱れが原因の場合、排卵誘発薬や周期調節薬が使用されることがあります。これにより、排卵のタイミングや周期を正常化し、黄体の機能を改善することが可能です。
  • 原因に応じて、抗炎症薬や免疫療法、手術などの治療法が選択されることもあり、例えば、子宮内膜のポリープや筋腫が原因で黄体機能不全が起こっている場合、手術による除去が検討されます。

黄体機能不全の治療は、症状や原因によって異なり、専門医の指導の下で最適な治療方法の選択が必要です。継続的なフォローアップと適切なケアを受けながら、黄体機能の改善と妊娠の実現を目指しましょう。

不妊の原因に気づきにくい黄体機能不全とは?

黄体機能不全の改善のために

黄体機能不全の改善のために、医療的な治療もありますが、食事、運動、サプリメント、漢方といったアプローチもあります。これらは自然な方法で黄体の機能をサポートし、健康な月経周期や妊娠の可能性を高める助けとなります。黄体機能にはまだ不明確なこともあり以下のような方法を試してみるのもひとつの手です。詳しく見ていきましょう。

食事

以下に具体的な食事の改善方法をご紹介します。

  • 栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。野菜、果物、穀物、タンパク質、健康な脂肪をバランスよく摂取することが重要です。
  • ビタミンB群を意識的に摂取しましょう。ビタミンB6やビタミンB12は黄体機能に関与しています。レバー、魚、ナッツ、種子、全粒穀物などが良い食品源です。
  • ビタミンEは黄体機能を改善するために重要な抗酸化物質です。アーモンド、ひまわりの種、ほうれん草、アボカドなどがビタミンEを含んでいます。
  • 亜鉛は黄体機能に不可欠なミネラルです。牡蠣、赤身の肉、種子、豆類などを摂取することで亜鉛を補給しましょう。
  • オメガ-3脂肪酸は抗炎症作用があり、黄体機能の改善に役立つ栄養素です。サーモン、マグロ、チアシード、亜麻の種などの食品に含まれます。

これらの食事の改善方法を取り入れることで、黄体機能をサポートし、健康な月経周期や妊娠の可能性を高めることができます。ただし、個々の状況に合わせて食事プランを調整するため、専門家のアドバイスを受けましょう。

運動

黄体機能不全の改善には、適度な運動を取り入れることが重要です。以下に運動の具体的なアプローチをご紹介します。

  • 有酸素運動:ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などの軽度な有酸素運動を日常的に行いましょう。運動の強度は自身の体力や健康状態に合わせて調整し、無理なく続けることが大切です。
  • 筋力トレーニング:下半身の筋肉を鍛えることで、骨盤周りの血液循環を改善しましょう。
  • ストレスを軽減するための運動:ストレスはホルモンバランスに影響を与える要因の一つです。リラックス効果のある運動を取り入れることが有効です。ヨガ、瞑想などリフレッシュしましょう。
  • 日常的な身体活動を増やす:デスクワークや座りっぱなしの生活を送っている場合、身体の血液循環が悪化しやすくなります。適度な身体活動のために、階段を使う、散歩をする、座ったままの時間を減らすなどの工夫をしましょう。

運動は全体的な健康とホルモンバランスの維持にも寄与します。過度な運動は逆効果となる可能性があるため、個々の体力や健康状態に合わせて適切な運動量と強度を選ぶことが重要です。

サプリ

黄体機能不全がホルモンのバランスが低下していることが原因となっている場合があります。そのため、女性ホルモンを整えるサポートとなるサプリメントを使用するのも良いでしょう。以下にいくつかサプリメントを紹介します。

成分 効果
大豆イソフラボン 女性ホルモンのような働きでホルモンバランスを整える
ビタミンE 血行促進・抗酸化作用・ホルモンバランスの調整
ビタミンB6 ホルモンバランスの調整
亜鉛 女性ホルモンの働きを高める
葉酸 子宮内膜の保護
女性ホルモンを整えるサポートとなるサプリメント

サプリメントの選択や摂取量には注意が必要です。医師の指導を受けながら、適切なサプリメントの選択と摂取を行いましょう。

漢方

以下に、代表的な漢方薬の一部とその効果を紹介します。

  • 当帰(とうき):血行促進や子宮機能の改善に効果
  • 白芍(はくしゃく):ホルモンバランスの調整効果
  • 牡丹皮(ぼたんぴ):血行を改善し、子宮内膜を良い状態にする

漢方薬は、漢方医師や中医師による診断と処方が必要であり、専門的な知識と経験が求められます。自己判断で漢方薬を利用する前に、必ず専門家の指導を受けることをお勧めします。漢方薬は一般的には安全で副作用が少ないですが、個人によって反応が異なります。また、他の薬剤との相互作用やアレルギー反応のリスクも考慮する必要があるので、医師との相談のもと、正確な処方と適切な使用方法を守りましょう。

専門家より

助産師 中友里恵

中友里恵

​​黄体機能不全は、妊活中の多くの女性にとって深刻な懸念です。気づきにくい原因でもあるので、適切なアプローチと専門家のサポートを受けることで、改善の道が開けます。黄体機能不全の原因ははっきりとわかっていません。大切なのは、自身の健康状態や体質に合わせた個別のアプローチを見つけることです。

妊活は、一人ひとりの体験やニーズに合わせたアプローチが必要なので、専門家やに相談しサポートを得ましょう。妊活はしばしばストレスや不安を伴うものですが、焦らずに自分自身と向き合い、サポートを受けながら赤ちゃんと会える時まで進めていきましょう。

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