トリソミーが分かる時期:妊娠中の診断法
妊娠と出産は多くの喜びをもたらす一方で、さまざまな不安もついてきます。特に、赤ちゃんが何らかの障害を持って生まれてくる可能性は、多くのご両親が心配する問題の一つです。この記事では、その中でも「トリソミー」と呼ばれる染色体の異常について、妊娠中にどのように診断されるのか、どの時期に診断が可能なのかについて詳しく解説します。 NIPT や超音波検査など、さまざまな診断法とその時期、費用についても触れてきますのでお読みください。
トリソミーとは何か?
この章では、「トリソミー」についての基本的な知識と、それが起こる確率やリスクについて解説します。
トリソミーの基本的な定義
トリソミーは、人が持つ染色体が通常よりも一組多い状態を指します。通常、人は23組の染色体を持っていますが、トリソミーの場合はそのうちの一組が3つ存在します。この3つ存在する染色体が、多くの健康問題や発育の遅れを引き起こすのです。最も知られているトリソミーの一例は、ダウン症候群です。これは21番目の染色体が3つある場合に起こります。他にも18番染色体や13番染色体に関するトリソミーも存在し、それぞれ独自の症状や問題を引き起こします。
トリソミーが起こる確率とリスク
トリソミーが起こる確率は、母体の年齢に影響する可能性があり、一般的に、35歳以上の母体ではリスクが高まるとされています。また、遺伝的な要素や、不妊治療を受けている場合にもリスクが変動することがあります。それでも、トリソミーは全体の妊娠数に対しては少数ですが、その影響は非常に大きいため、事前の診断が非常に重要です。
参考)日本産婦人科医会 15.超音波検査と染色体検査との関連(出生前診断について)
トリソミーの診断とは?
ここでは、トリソミーについての基本情報と、その診断方法について詳しく解説します。
トリソミーとは何ですか?
トリソミーとは、通常人間が持つべき46本の染色体に、一本多く染色体が存在する状態です。この一本多い染色体がもたらす影響は、人それぞれ異なる場合がありますが、多くの場合で身体的・知的な発達に遅れをもたらす可能性があります。
トリソミーの診断方法は?
トリソミーの診断は主に出生前診断で行われます。一般的な方法としては NIPT (Non-Invasive Prenatal Testing)新型出生前診断、羊水検査、絨毛検査です。それぞれの診断方法にはメリットとデメリット、リスクが存在するため、専門医としっかりと話をして、最適な方法を選ぶことが大切です。次の章で詳しく説明します。
妊娠初期の診断法
妊娠初期は特に様々な障害や症状、そのリスクを知りたいと考える方が多い時期です。この章では、妊娠初期に行われる主なトリソミーの診断法について、その特徴やメリット、デメリットを詳しく解説します。
胎児超音波検査(First Trimester Screening)
娠初期、特に妊娠11週から14週にかけて行われる胎児超音波検査は、低侵襲でリスクが非常に低い診断方法です。この検査では、胎児の頸部透明帯の厚みを測定し、それによってダウン症候群などの染色体異常のリスクを評価します。
参考)日本超音波医学会用語・診断基準委員会 超音波による胎児形態の標準的評価法
NIPT(非侵襲的産前診断)
NIPTは妊娠10週以降に可能な、非侵襲的な出生前診断方法です。この検査では、母体の血液中に存在する胎児由来のDNAを分析し、トリソミー21(ダウン症候群)、トリソミー18(エドワーズ症候群)などの染色体異常を高精度で検出します。
- メリット: 高い精度で染色体異常を検出可能。非侵襲性なので、母体・胎児へのリスクが非常に低い。
- デメリット: 価格が高い場合があり、全ての種類の染色体異常を検出できるわけではありません。
この検査は確実性が高いため、リスクが指摘された場合はより侵襲性の高い検査を検討することもあります。
CVS(絨毛膜標本採取)
CVS(Chorionic Villus Sampling)は、妊娠10週から13週の期間に行われる染色体異常の診断方法の一つです。この検査では、絨毛(胎盤の一部)から少量の組織を採取し、染色体解析を行います。
- メリット: 妊娠初期であるため、早い段階で染色体異常を確認することができます。その結果、早期に適切な対応が可能です。
- デメリット: 侵襲性があり、流産などのリスクがある。また、痛みを伴う可能性もあります。
CVSは、 超音波検査 や NIPT で何らかのリスクが見つかった場合や、高齢出産、家族歴などで染色体異常のリスクが高いと判断された場合に推奨される方法です。この検査により、ダウン症候群(トリソミー21)、エドワーズ症候群(トリソミー18)など、多くの染色体異常を確実に診断することができます。ただし、その確実性と引き換えにリスクも存在するため、検査を受ける前に医師としっかりとリスクとメリットを話し合い、判断することが重要です。
妊娠中期のトリソミー診断法
妊娠中期になると、診断法も多様化し、より確実な結果が期待できます。ここでは、妊娠中期の主なトリソミー診断法について詳しく説明します。
二重、三重マーカーテスト
二重、三重マーカーテストは、妊娠中の母体血液から特定の物質(マーカー)を測定する検査です。
- 二重マーカーテスト:ダブルマーカーテスト。AFP(α-フェトプロテイン)とhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の値を測定し結果を合わせて判定するテストです。
- 三重マーカーテスト:トリプルマーカーテスト。AFPとhCG、uE3(非抱合型エストリオール)の値の結果を合わせて判定するテストです。
- メリット:非侵襲的で、リスクが低い。
- デメリット:診断そのものではなく、リスクを評価する指標に過ぎない。
この検査は、ダウン症候群(トリソミー21)やエドワーズ症候群(トリソミー18)などの染色体異常のリスクを評価するために用いられます。ただし、高リスクと判断されても必ずしも染色体異常があるわけではありません。
非侵襲的プレナタル検査とは?
非侵襲的プレナタル検査(NIPT)は、母体の血液から胎児のDNAを分析する検査です。
- メリット:非侵襲的で、精度が高い。
- デメリット:高額で、保険適用外である。
NIPTは高い精度でトリソミー21、18、13のリスクを評価できます。しかし、確定診断には至らず、高リスクとされた場合は追加の検査が必要です。
羊水検査とは?
羊水検査は、妊娠15〜20週で行われる診断方法です。羊水中の細胞を採取し、染色体解析を行います。
・メリット:高い確実性。
・デメリット: 侵襲性があり、流産のリスクがある。
羊水検査は、高い確実性で染色体異常を診断できますが、侵襲的な方法であるためリスクもあります。
詳細な超音波検査
妊娠中期に行われる詳細な超音波検査は、胎児の体全体を詳しく観察するものです。
- メリット: 非侵襲的で、詳細な観察が可能。
- デメリット: 染色体異常の確定診断はできない。
この検査では、頭部、心臓、手足などを詳細に観察し、発育に問題がないか確認します。ただし、染色体異常の確定診断には他の方法が必要です。妊娠中期においても、多くの診断方法がありますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。医師とよく話し合い、自分に合った診断方法を選びましょう。
妊娠後期の診断法
妊娠後期には、出産に備えてさまざまな診断が行われます。特にトリソミーなどの染色体異常が疑われる場合、更に詳細な診断が必要になることがあります。ここでは妊娠後期の主要な診断法について説明します
超音波検査の進行
妊娠後期には、超音波検査が更に詳細に行われます。
- メリット: 非侵襲的で、胎児の成長を確認できる。
- デメリット: 染色体異常の確定診断は不可能。
この時期には、胎児の大きさや臓器の状態、羊水の量などが詳細に調べられます。また、何らかの異常が見つかった場合、追加の診断が行われることもあるのでよく医師とご相談ください。
妊娠後期の診断も、それぞれにメリットとデメリットがあります。リスクとメリットをしっかりと医師と相談し、自分に適した診断方法を選びましょう。この診断結果が、無事な出産と健康な赤ちゃんにつながります。
トリソミーの診断時期
トリソミーの診断には最適な時期があります。
妊娠中のトリソミー診断の最適な時期は?
トリソミーの診断にはいくつかの手法がありますが、それぞれに最適な時期があります。たとえば、妊娠初期には 胎児 超音波検査(First Trimester Screening)や NIPT (非侵襲的産前診断)が最適です。これらは妊娠11〜13週で推奨されることが多いです。妊娠中期では、二重、三重マーカーテストや 超音波検査 が行われる場合があります。これらは 妊娠 15〜20週が目安です。比較的確実な診断方法とされる「羊水検査」は、妊娠15〜20週で行われることが一般的です。しかし、侵襲的な方法であるため、リスクも伴います。総じて、トリソミーの診断は妊娠初期から中期にかけて行われることが多く、その時期や方法は主治医とよく相談してください。
検査の結果はいつ受け取れますか?
検査方法によって結果が出るまでの時間は異なります。例えば、NIPTは約1〜2週間、羊水検査は2〜3週間で結果が出る場合が多いです。胎児超音波検査の場合、その場で結果を知ることが可能な場合もあります。一方で、詳細な遺伝子検査が必要な場合には、数週間待たなければならないこともあります。検査の種類と病院の設備によっては、時間がかかる場合がありますので、心の準備と共に、計画的に進めていくことが重要です。
トリソミー診断の利点と注意点
トリソミーの診断の良いところと注意点について解説します。
トリソミー診断の利点は?
トリソミー診断の利点はいくつかあります。
利点 | 内容 |
早期発見 | 早期に適切な医療ケアやサポートが可能 |
高い精度 | 高い確度での診断が可能(特に侵襲的な検査) |
心の準備 | 確定診断後、将来に備えて心の準備や計画ができる |
選択肢の拡大 | 早期診断によって、出産や治療に関する選択肢が増える |
トリソミー診断の注意点は?
一方で、トリソミー診断にもいくつか注意点があります。
項目 | 説明 |
精度 | 全ての検査が100%確実でない。 特に非侵襲的な検査は偽陽性や偽陰性の可能性もある |
精神的ストレス | 診断待ちの期間や診断後に精神的なストレスがかかる可能性がある |
侵襲性 | 侵襲的な方法(羊水検査、CVSなど)は流産などのリスクがある |
コスト | 高額な検査もあり、自己負担が必要な場合が多い |
トリソミー診断の費用と保険適用
トリソミーの診断にはどのくらいの費用がかかるのか、保険適用はできるのか解説します。
トリソミー診断の費用はいくらですか?
トリソミー診断の費用は、検査の種類や施設によって異なります。一般的な価格帯を以下に示します。
検査の種類 | 一般的な費用 |
胎児超音波検査(First Trimester Screening) | 約10,000~30,000円 |
NIPT(非侵襲的産前診断) | 約10万~20万円 |
CVS(絨毛膜標本採取) | 約10万~20万円 |
二重、三重マーカーテスト | 約10,000~30,000円 |
羊水検査 | 約10万~20万円 |
この金額に入院費用などがかかることもあります。施設や地域によって異なる可能性があります。具体的な費用は、専門の医療機関で確認してください。
トリソミー診断は健康保険が適用されますか?
トリソミー診断は、健康保険の適用外とされています。また、医療費控除や高額療養費制度の対象となりません。具体的な費用や保険適用は医療機関や個々の状況により異なる可能性があります。診断を受ける前に、しっかりと費用や保険適用についても相談しましょう。
まとめ
トリソミー診断には多くの方法が存在し、それぞれに独自の特長、費用、リスクがあります。妊娠の各期間で利用できる診断法も異なるため、どの診断法が最も適しているのかをしっかりと考慮することが重要です。費用は、検査の種類や施設によって大きく異なる可能性があります。保険適用の可否も各施設や検査によって異なるため、事前にしっかりと確認しましょう。トリソミー診断には多くの利点がありますが、リスクや注意点も存在します。検査を受ける前に考慮し、医療専門家と十分に相談することが必要です。最適な診断法とタイミングを選ぶためには、医師や専門家との密なコミュニケーションが不可欠です。それにより、安心して妊娠・出産に臨むことができるでしょう。
参考)日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会 産婦人科 診療ガイドライン 産科2020編
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