一般不妊治療
一般生殖年齢カップルの妊娠率は、避妊をせずに性交渉を行った場合、最初の6か月間では8%、次6か月で4%、次の1年で1.5%となっており、時間の経過とともに低下してきます。不妊症の定義は、1年以上たっても妊娠に至らない場合を指します。不妊原因が検査で判明するのはわずか半数のため、不妊症の定義は不妊期間を1年と区切って定義しています。
治療開始が望ましい時期とは以下の通りです。
- 妻が35歳未満 : 1年以上 経っても妊娠しないとき
- 妻が35歳以上 : 半年以上 経っても妊娠しないとき
まずはスクリーニング検査を行うことをお勧めします。
タイミング療法
タイミング療法は、「最も妊娠しやすいタイミングに性交を行う」方法です。基礎体温や超音波検査、ホルモン検査などを参考にしながら排卵日を予測し、効果的な性交渉のタイミングをアドバイスします。もっとも自然な妊娠に近く、お二人にとって負担の少ない不妊治療です。
年齢など個々の条件は異なりますが、まずは検査の結果、きちんと排卵があって、精液所見に問題がなければ、タイミング療法から治療をスタートすることをおすすめいたします。
自分で基礎体温をつけることで、ある程度の排卵日を予測することはできますが、実際には排卵が自分の思っているタイミングと異なっていることもあります。生理不順が見られる場合などは特に正確に予測するのが難しいかもしれません。自分たちなりのタイミングによる性交渉でなかなか妊娠できないときは、一度指導を受けてみることをお勧めします。
人工授精療法
精液所見不良(乏精子症、精子無力症とも言います)、性交障害、フーナーテスト(性交後試験)不良例、タイミング法を半年以上続けても妊娠できない、原因不明な方が対象です。 当院では人工授精を午前だけでなく、夕方(18時まで)も実施できるようにしています。
卵子と精子が出会い授精する。この確率を高める治療法です。
人工授精の安全性
精液中には精子のほかに白血球、微生物やゴミなどが存在します。
調整や抗生剤服用により母体への感染症などのリスクを減らすなど、安全管理を十分に行って施工しております。また人工授精による胎児異常発生率は自然妊娠と同じです。
人工授精が必要な方
- 精子が少ないまたは運動率が低いため、自然の性交では受精に必要な数の精子が卵管膨大部に達しないと考えられる場合
- 精子は正常でも、フーナーテスト(性交後試験)が不良で、十分な精子が子宮に入らない場合
(抗精子抗体やピロリ菌抗体などの原因が除外された方)- 膣内射精できない場合
- 性交できない場合
- 凍結精子を用いる場合(男性の多忙や長期出張など)
- タイミング治療にて妊娠に至らない場合
上記の理由で、人工授精へとステップしていただきます。人工授精という名前から非常に特別な治療のように感じますが、実際にはほんの少し妊娠の入口をお手伝いするだけです。具体的には、やわらかく細いチューブを使って子宮頸管をバイパスし、予定した排卵日に合わせて精子を子宮内に注入します。子宮内精子注入法(IUI)といいます。痛みはほとんどありません。その後の受精・着床の過程は、自然妊娠と同じです。
IUIの目標は運動良好な多数の精子を子宮内に注入することであり、精液より運動精子を分離濃縮する必要性が生じます。また、射精された精液中には精子以外に細菌やプロスタグランディン(子宮を収縮させる痛みの物質)が含まれており、精液そのものを注入することは細菌感染や下腹痛などの副作用の原因となります。したがって、精子を分離する必要があります( 精子調整に約1時間を要します)。
ご主人は、予測排卵日当日に精液を採取していただきます(射精後2時間以内に持参して下さい)。院内で採取する場合は、メンズルーム(有償)をご利用いただけます。