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卵子凍結で妊娠できる確率はどのくらいですか?

[2023.04.21]
卵子凍結は、将来の妊娠・出産の可能性を高める医療技術です。ただし、妊娠を100%保証するものではないため、高額な費用や副作用のリスクを考慮する必要があります。では卵子凍結で妊娠できる確率はどのぐらいなのでしょうか?卵子凍結の具体的な妊娠率についてくわしく解説します。

卵子凍結とは?

卵子凍結は、卵巣 から採取した 卵子 のうち、状態の良いものを選んで凍結保存する方法です。凍結する前に、卵子がダメージを受けないように特別な処理が施され、超低温の液体窒素で急速冷凍し、保存されます。
卵子凍結によって保存された卵子は、何十年も状態を保ち、将来的に 妊娠 を希望するタイミングで融解して使用することができます。

卵子凍結は元々、がん治療などで妊娠が難しくなるリスクを抱える人を対象に行われていました。これが「医学的適応による卵子凍結」です。

そして、女性の社会進出や晩婚化によって妊娠・出産のタイミングに悩む人が増えている今、注目されているのが「社会的適応による卵子凍結」です。加齢による妊娠率の低下や流産率の上昇リスクに備える方法として、卵子凍結を行う人が増えています。

卵子凍結で妊娠できる確率はどのくらいですか?

妊娠の仕組み

自然妊娠と卵子凍結からの妊娠に違いはあるのでしょうか?それぞれの妊娠にいたるまで(着床するまで)の経過をみてみましょう。

自然妊娠

自然妊娠が成立するには、下記の4ステップが必要です。

  • ステップ1 排卵
    排卵とは、卵巣 から 卵管 に向けて、成熟した 卵子 が飛び出すことです。卵子は 精子 と出会うために、卵管 の端に位置する卵管膨大部(らんかんぼうだいぶ)で待機します。卵子の寿命は約24時間しかないため、その期間内に精子と出会わなければ妊娠はできません。
  • ステップ2 受精
    卵子 と 精子 が出会い、卵子の中に精子が侵入することを 受精 といいます。排卵後24時間以内に精子が卵管膨大部に到達していれば、受精のチャンスがあります。精子の寿命は約72時間であるため、排卵日の2〜3日前から排卵日までが性交のベストなタイミングです。
  • ステップ3 子宮へ移動
    受精卵 は、1週間ほどかけて 卵管 から子宮に移動します。移動中に細胞分裂を繰り返し、成長していきます。
  • ステップ4 着床
    着床とは、受精卵 が子宮内膜に到着し、子宮内膜にもぐりこんだ状態です。着床 することで、受精卵 は母体から必要な栄養や酸素を受け取り、安定した環境で成長していきます。着床が確認されれば、妊娠成立となります。

引用元)日本生殖学会 Q1. 妊娠はどのように成立するのですか?

卵子凍結からの妊娠

卵子を 採卵 して凍結保存した後、凍結卵子を使って妊娠するまでが、下記の6ステップです。

  • ステップ1 排卵誘発
    複数の卵子を採取するために、排卵誘発剤(飲み薬や注射)を使用して卵子の発育を促します。自然な 排卵 を待つ方法もあります。
  • ステップ2 卵子の採取
    超音波検査をして 卵巣 の状態を確認しながら、膣から細長い針を卵巣に向けて刺し、成熟した 卵子 を吸い出します。
  • ステップ3 卵子 の凍結
    採取した 卵子 のうち、状態の良いものを凍結保存します。凍結による影響を最小限に抑えるために、卵子は特別な液体で保護され、急速冷凍されます。

    ここまでが、卵子凍結の流れです。
  • ステップ4 卵子の融解
    妊娠を希望するタイミングで卵子の融解を行います。卵子にできるだけ負担をかけないように、段階的に細胞を起こしていきます。
  • ステップ5 顕微授精
    細い針に採精した精子を入れ、融解した卵子に刺して 受精 させる「顕微授精(けんびじゅせい)」を行います。受精卵の細胞分裂が順調に進むかを観察しつつ、数日培養されます。
  • ステップ6 胚移植
    順調に成長した胚(受精卵)を子宮内に移植します。正常に着床すれば、妊娠が成立します。

引用元)日本生殖学会 Q11.生殖補助医療にはどんな種類があり、どこに行くと受けられますか?

卵子凍結の妊娠率は?

日本産科婦人科学会の報告では、2020年に行われた未受精の 凍結卵子 を用いた 胚移植 での妊娠率は29.0%でした。

ただし、卵子 を凍結した年齢や胚移植を行った年齢についてはそれぞれ違ってきます。妊娠率は妊娠を希望する年齢が若いほど高く、年齢を重ねるほど低くなるため、すべての人にこの妊娠率があてはまるとは言いにくいでしょう。

引用元)2020年体外受精・胚移植等の臨床実施成績

卵子凍結の保存期間は妊娠率や赤ちゃんに影響する?

2000年代に確立された「ガラス化保存法」によって、凍結された卵子は半永久的に保存できるようになっています。

アメリカ生殖医科学会のガイドラインによると、卵子凍結後に顕微授精によって生まれた赤ちゃんと、新鮮胚移植(採卵した卵子を凍結せずに受精させて胚移植を行うこと)によって生まれた赤ちゃんでは、出生体重や先天的な異常などで明らかな差はないと報告されています。

引用元)厚生労働省 未受精卵子凍結保存の現状

卵子凍結による妊娠率を高めるために

卵子凍結で妊娠できる確率はどのくらいですか?

卵子凍結の妊娠率をより高めるポイントをみてみましょう。

凍結前の体外受精(IVF)の有無

卵子凍結 は、精子 と 受精 させる前の 未受精 の 卵子 を凍結保存する方法です。これに対し、体外受精 を行って受精卵にしてから凍結する方法が「胚(受精卵)凍結」です。

卵子凍結 と 胚凍結 では、卵子凍結のほうが凍結と融解による影響を受けやすいことがわかっています。そのため、パートナーがいる場合には、卵子凍結よりも妊娠率の高い胚凍結がのぞましいです。

凍結する卵子の数

卵子をいくつ凍結すれば、将来的な妊娠の可能性を高くできるのでしょうか?

凍結卵子を解凍し顕微受精 した場合、出産の可能性は35歳以下と35歳以上で大きな差があることがわかっています。以下の表は、年齢と凍結卵子の数に応じた出産の可能性を示しています(未受精卵子凍結の医学的適応に基づくデータより)。

  35歳以下 35歳以上
凍結卵子5個の場合 15.4% 5.1%
凍結卵子10個の場合 60.5% 29.7%

表のように、妊娠・出産する年齢が35歳以下で凍結卵子が10個あれば、約60%の確率で出産を期待できることがわかります。35歳以上で凍結卵子が10個の場合は、約30%です。

アメリカ生殖医学会では、38歳で1人の子どもを産むには25~30個の卵子が必要であるとしています。

引用元)Planned oocyte cryopreservation for women seeking to preserve future reproductive potential:
an Ethics Committee opinion

凍結するタイミング

妊娠率を高めるには、できるだけ若いうちに 卵子凍結 を行うことが大切です。社会的適応による卵子凍結は、成人以降を対象としているため、20代での卵子凍結が望ましいと言えます。

凍結方法の選択

凍結方法には、緩慢凍結法とガラス化保存法があります。現在では、ガラス化保存法が主流です。ガラス化保存法では、水分を減らして氷晶形成を防ぎ、 卵子の細胞内構造や染色体構造を保護することで生存率や受精率を向上させることができます。

引用元)
未受精卵子凍結保存の現状 
Planned oocyte cryopreservation for women seeking to preserve future reproductive potential:
an Ethics Committee opinion

日本がん・生殖医療学会 妊孕性温存方法
厚生労働省 未受精卵子凍結保存の現状

卵子凍結による妊娠後のリスクについて

卵子凍結を行うことで、将来の妊娠にリスクは生じるのか見てみましょう。

凍結・保存中の損傷や破壊のリスク

凍結時や保存中に 卵子 になんらかの損傷や破壊がおこった場合、その卵子は 受精 できない状態となります。しかし、現在ではそのリスクは低くなっており、融解後の卵子の生存率は85%程度となっています。ただし、病院やクリニックによって治療成績は異なるため、受診前にホームページなどで確認しておくと安心です。

凍結前の遺伝的検査の重要性

赤ちゃんに遺伝的な問題が生じるかは、卵子 と 精子 が 受精 した段階で決まります。「 着床前診断 」や「 出生前診断 」という言葉を耳にしたことがあるかもしれませんが、着床前診断は胚移植前(受精後数日)、出生前診断は妊娠初期に行われる検査です。
凍結前の卵子を用いた遺伝学的検査は行われていませんが、血液検査によって特定の染色体や遺伝子になんらかの異常が見られないかをチェックする「遺伝子スクリーニング検査」を受けることは可能です。

ただし、遺伝的な問題がない人が安易に受けることは推奨されていません。日本医学会ガイドラインでは、遺伝学的検査は「事前に適切な遺伝カウンセリングを行った後に実施する」必要があるとされています。医師と十分に話し合い、納得のいく選択を行うことが大切です。

引用元)出生前診断・着床前診断と生命倫理
民間事業者が提供する非発症保因者診断を目的とした臨床研究「夫婦遺伝子スクリーニング検査」についての懸念

凍結後の出産時の合併症や流産率

卵子凍結することで、卵子を保存当時の若い状態で保つことができます。しかし、出産に必要な体は年齢を重ねるため、35歳以上の出産は高齢出産であることに変わりはありません。

35歳以上の出産では、妊娠糖尿病(妊娠中に初めて糖尿病が発症した状態)、妊娠高血圧症候群(母体が高血圧となり母子の命にかかわる合併症が発生しやすくなる状態)、胎盤の位置異常、 切迫早産 、そして常位胎盤早期剝離(胎児が出生する前に胎盤が子宮からはがれ、母子ともに命の危険がある状態)などの合併症が発生するリスクが高まります。合併症や難産の確率も高くなるため、帝王切開率も高くなる傾向があります。

流産率についても見てみましょう。日本での凍結した卵子を融解して妊娠した場合の流産率は、2020年のデータでは11.1%(妊娠数45例のうち流産が5例)となっています。医療機関で確認された妊娠のうち、流産は15%前後と言われているため、卵子凍結によって流産が増える心配は少ないと言えるでしょう。

引用元)高齢妊娠に伴う諸問題
令和 3 年度倫理委員会(現臨床倫理監理委員会)登録・調査小委員会報告
日本産科婦人科学会 流産・切迫流産

専門家より

助産師 中友里恵

中友里恵

卵子凍結は一つの選択肢として、仕事ややりたいことを頑張る女性が、妊娠出産のライフプランも視野に入れて過ごすことはとても大切なことですし、焦りや不安を軽減することができます。私の周囲でも、卵子凍結をしたり、関心のある方が増えています。

卵子凍結は医療行為ですし、採卵に伴う副作用や、凍結した後の保管料、顕微授精をするときの費用もかかりますので、ご自身の健康面や経済面もきちんと考えておかなくてはいけません。

将来のことはわからないことも多いですが、後悔のないようご自身でライフプランを立ててみてくださいね。

東京都助成金の利用で、卵子凍結 定額プラン 172,900円(税込)〜
東京都助成金の利用で、卵子凍結 定額プラン 172,900円(税込)〜

\ 卵子凍結の検査や流れが分かる /

卵子凍結 説明会動画
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