
当院では、開院当初より体外受精のほぼ全例においてVitrolife社のタイムラプスインキュベーター「EmbryoScope+」を導入しています。この装置は顕微鏡とカメラを内蔵しており、インキュベーター内で胚を培養する間、10分ごとに自動撮影された画像をコマ送り動画として確認できるため、胚の成長過程を詳細に観察できます。
これまで胚評価には「KIDScore™︎」を用い、培養士が胚の分割タイミングを設定し、スコアを算出することで移植や凍結の参考としてきました。しかし現在では、AIが完全自動でスコアを算出する「iDAScore™︎」を導入し、より客観的で一貫性のある評価が可能となりました。
iDAScore™︎は、受精から胚盤胞までに撮影された約1万枚もの画像をAIが解析し、胚ごとに1.0~9.9(分割胚は~7.9)のスコアを付けます。高スコアほど妊娠継続の可能性が高いことを示しており、見た目の評価が同等な胚が複数ある場合でも、iDAScore™︎を指標とすることで、より高い妊娠率が期待できる胚を選択できます。
2024年1月からはiDAScore™︎のVersion 2が導入され、国内外18万個以上の胚データを学習したことで、性能が大幅に向上。従来の胚盤胞に加え、2日目・3日目の分割期胚にも対応可能となりました。
なお、当院では今後、胚の評価結果を記載した報告書に、形態学的グレードだけでなくiDAScore™︎と移植順位も明記して行く予定です。iDAScore™︎は、評価専門の“デジタル胚培養士”ともいえる存在であり、今後は胚評価における新たな標準となることが期待されます。当院ではこのAI評価を最大限活用し、患者様にとって最適な胚を選択してまいります。